農業研究本部

畑土壌の微生物活性とその規制要因

東田 修司、田村 元、山神 正弘

北海道立農試集報.70,17-26 (1996)

 十勝地方の畑土壌を供試して、希釈平板法による微生物数、酵素活性、バイオマス、ATPなどを測定し、それらと土壌理化学性ならびに作物収量の関係を検討した。有機物分解にかかわる微生物活性は基質量及び酸素の供給量に規制され、リン酸関連の代謝活性は基質量に加えて有効態のリン酸が高い土壌で高かった。多湿黒ボク土ては、黒ボク土に比べて基質含量が高いにも拘わらず、有機物分解に係わる微生物活性が同水準であり、埋設した麦桿の分解率も低かった。これは、多湿黒ボク土では気相率が低く、酸素の供給量が制限されるために、基質に対応して微生物活性が高まりにくい条件にあるためと推定された。ただし、いずれの土壌も気相率が10%以下では麦桿の分解率が低下した。一方、グルコシダーゼとセルラーゼは、農家圃場の収穫期におけるてん菜の窒素吸収量と、また、フォスファターゼはリン酸吸収量と有意な正の相関を示し、土壌酵素活性は、土壌の総合的な環境をあらわす指標となり得ることが示唆された。


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