農業研究本部

畑土壌における微生物活性の指標としての土壌酵素の特徴

東田 修司、山神 正弘

北海道立農試集報.71,7-16 (1996)

 畑土壌における微生物の代謝活性の強弱を評価するための手法として、FDAの分解活性("FDA"と略記)、p-ニトロフェノ-ルの誘導体("S"を付した)を基質とするいくつかの酵素活性(フォスファタ-ゼ、α-グルコシダ-ゼ、β-グルコシダ-ゼ、セルラ-ゼ)及び4-メチルウンベリフェロンの誘導体("F"を付した)を用いた酵素活性(α-グルコシダ-ゼ、セルラ-ゼ)の特性について比較検討した。十勝中央部の農家圃場を対象として調査したところ、フォスファタ-ゼ(S)を除く他の酵素活性はてん菜乾物収量と正の相関関係を示した。フォスファタ-ゼ(S)は土壌を薫蒸処理、または超音波処理をしても活性の低下が小さく、また、多湿黒ボク土の耕起層よりも下の暗黒色土層で高い活性が見いだされることが特徴であった。これらの結果はフォスファタ-ゼ(S)が他の酵素活性に比べて安定であり、バイオマスに依存しないで存在し得る可能性を示唆しており、微生物の活性を表す指標としては適切ではないと判断した。α-グルコシダ-ゼ(S)は、フォスファタ-ゼ(S)と高い相関関係を有したので同様に微生物活性の指標としては適さない。また、土壌間を比較すると、多湿黒ボク土は多湿のために微生物活性が抑制された条件にあると考えられるにも拘らず、フォスファタ-ゼ(S)、α-グルコシダ-ゼ(S)とβ-グルコシダ-ゼ(S)は黒ボク土と多湿黒ボク土を同等または多湿黒ボク土を高く評価する傾向であった。逆にセルラ-ゼ(S,F)とα-グルコシダ-ゼ(F)は黒ボク土の方をより高く評価した。他の結果を含めて、本試験で供試した酵素活性の中では、土壌微生物の代謝活性を評価する上で、α-グルコシダ-ゼ(F)が最も適切な手法であると判断した。


全文(PDF)