農業研究本部

6 小果樹類の特性と栽培技術

3 繁殖・植付け

(1) 繁殖

 繁殖は取り木、株分け、挿し木のいずれかで行うが、すぐりのヨーロッパ系は挿し木では活着率が低いため、取り木か株分けが良い。取り木は、春先に若い枝の根元に土をかけて発根させる。株分けは、親株の周辺に発生した枝の根元に発根が認められてから切り離して苗木にする。挿し木(休眠枝挿し)は、春先の発芽前に穂木を15~20㎝の長さに切り(芽は2~3芽付けて上部は芽の上で切る)、基部(土に挿す方)を45度程度の斜めに切り、排水の良い日陰の場所に地上1芽残して、穂木の長さの3分の2までさし込む。

(2) 植付け

 植付けは春植えと秋植えがあり、北海道の場合には発芽前の春植えが望ましい。土壌に対する適応性は広いが、排水の良い有機質に富んだやや粘質の土壌に良く生育する。栽植距離は、すぐり(アメリカ系)とふさすぐりは2m四方か2.0m×2.5m、ヨーロッパ系のすぐりは1.5m×2.0mとする。植え穴は直径60㎝、深さ30cmとし、1穴に堆肥6~7kgとようりん2握りを施して土と混合し、その上に表土を入れ、根を四方に広げてやや深めに植える。

4 結実確保(結果習性)

 すぐりは、当年伸長した枝の葉腋に花芽が着生し、翌春にそれが開花結実する。花は単生又は2~3花で、中には4花というものもある。花梗には接節がある。枝齢が進むと短果枝の形成が多くなり、花芽は花束状に密着し、収量・晶質が低下する。
ふさすぐりは当年伸長した枝に花芽が着生し、翌春にそれが開花結実する。枝齢が進むと花芽が密着し、果房は短く貧弱になる。
大部分の品種は、自家結実性で単植でもよく結実する。

5 収穫

 収穫期は、品種・気象・用途によって異なるが、札幌地方では7月中旬~8月上旬頃である。果実が柔らかくなり、品種独特の色・香気・甘味などが出てから収穫する。
ふさすぐりで果実をジャムやゼリーなどに加工する場合は、ペクチン含量の減少を防ぐため、やや早めに収穫する。脱粒しやすい品種では、成熟したものから2~3回に分けて収穫する。赤色品種は、樹全体の成熟を待って一度に収穫することができる。
収穫の方法は、すぐりは革手袋をはめ、結果枝の下に箕を置いて結果枝をしごくようにすると能率が良い。ふさすぐりは、一度に2~3果房をまとめてっまみ取る。

6 土壌管理・施肥

 土壌管理法としては、病害虫の対策面からむ清耕栽培が望ましい。早春の施肥が終わってから収穫までの間に3~4回中耕除草を実施して土を膨軟に'し、根の伸長を促す。また、根回りに雑草が生えない程度の厚さに敷草をすると、果粒の汚れを防ぐとと包に有機質の補給にむなる。収穫後は、軽い除草程度にとどめる。

表22 すぐり・ふさすぐりの施肥標準 (単位:kg/10a)

地帯区分


成株(6年生以上)



若株(3~5年生)



幼株(2年生以下)



目標収量





P2O5



K2O





P2O5



K2O





P2O5



K2O


全道一円


1500



10





10















7 主な病害虫

 すぐりには、うどんこ病と斑点病が発生する。うどんこ病はヨーロッパ系に多く、最初被害部は白粉で覆われ、後には黒変して早期落葉する。防除としては、道基準に掲載された農薬はないが、発芽期から6月中旬頃までに10~15日おきに殺菌剤を散布する。斑点病は、葉に小さな褐色の斑点が現れ、次第に拡大し、周縁部は紫褐色、中央部は灰色となる。

防除は、収穫終了後から落葉期まで3回程度殺菌剤を散布する。
ふさすぐりは、斑点病とナミハダニが発生する。斑点病の対策はすぐりに準ずる。ナミハダニは、成虫態で根際や落葉の下で越冬し、5月中旬ごろから葉を吸汁する。札幌地方では、6月中旬~7月に発生が多くなる。多発しないうちに殺ダニ剤を散布する。

8 加工利用

 すぐりの完熟果は独特な甘酸っぱい風味を有するため、生食にも利用されるが、ふさすぐりは生食には向かない。
加工製品としては、ジャム、ゼリー、果汁飲料、フルーツソース、ワイン、シロップ漬け、菓子の副材料などである。特に、すぐりの甘酸っぱい酸味を生かしたジャム、ふさすぐりの鮮明な紅色・ペクチンを生かしたゼリーは品質的に優れている。

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