農業研究本部

8 小果樹類の特性と栽培技術

3 繁殖・植付け

(1) 繁殖

 繁殖は、取り木、株分け、挿し木のいずれかで行う。取り木は、若い枝の根元に土をかけて発根させる。株分けは、親株の周辺に発生する枝に発根が認められてから切り離して苗木にする。挿し木(休眠枝挿し)は、ビニールハウスに川砂とピートモス(酸度矯正していないもの)を容量で半々に混合した床土を作り、挿し穂は発芽前に10~15㎝の長さ(2~3芽つける)に切り、土に挿す方は45度の斜めに鋭い刃物で切って、土に斜めに挿した後、直ちに灌水する。挿し木後は黒色寒冷紗で遮光し、地温は18℃に保温する。挿し木法による繁殖は、他の小果樹類に比べると発根しずらい。

(2) 植付け

 他の小果樹類と同様に春植えと秋植えがあるが、北海道では発芽前の春植えが望ましい。土壌は有機質に富み、排水が良好で保水性のある酸性土(pH4.3~4.8)を好む。
栽植距離は、2m四方か1.6m×2.5m程度とするが、肥沃地では2.0m×2.5mとする。植え穴は、直径60㎝、深さ30㎝とし、過燐酸石灰を二握り程度を入れて土と混和し、さらにピートモスと表土を半々に混合して入れながら、根を四方に広げて植える。

4 結実確保(結果習性)

 花芽は腋花芽で、当年伸長した枝(短果枝・中果枝・最果枝)の先端部分に着生し、翌春にそれが開花結実する。花芽は枝や葉を含まず、花のみを含んでいる。枝齢が極度に進むと耐寒性が弱まり、花芽が枯死して収量が不安定となる。自家結実性で単植でも結実するが、異品種を混植すると果実の肥大が良くなる。

5 収穫

 収穫期は品種、気象、用途により差がでるが、札幌地方では早生種で7月下旬頃から始まり、晩生種の終わりは9月中下旬になる。完熟の度合いは、果梗周辺が完全に濃藍色になっているかどうかで判断する。
生食用は、完熟して糖度が最高になり、酸度が最低になってから収穫するが、加工用は、多少早めに収穫する。収穫期間は約1か月間あるので、3~4回に分けて行う。
収穫方法は手摘みで、成熟した果粒から順次行う。

6 土地管理・施肥

 ブルーベリーは根が細く浅いので、清耕法とする。春先は株の回りにピートモス(又は低位泥炭)、モミガラ、ノコクズなどをマルチして秋にすき込むようにする。これは、土壌の酸性化と有機質の補給を図るためである。果実の肥大期に雨量が少ない場合は、適宜灌水して発育を促す。
施肥は融雪直後に行い、施肥量は表を基準に適宜加減する。なお、肥料の種類は、土壌の酸性化を図るために硫安、過燐酸石灰、硫酸カリが望ましい。

表23 ブルーベリーの施肥標準

地帯区分


成株(6年生以上)



若株(3~5年生)



幼株(2年生以下)



目標収量





P2O5



K2O





P2O5



K2O





P2O5



K2O


道南・道央


550




















道北東部


450





















留意事項
1 ハイブッシュ系品種を基準とする。10a当たり200~250本植えを基準とする。
2 土壌管理は清耕法を基準とする。
3 適正pH4.3~4.8を維持する。肥料は生理的酸性肥料を用いる。石灰質資材は施用しない。

7 主な病害虫

 病害では、若い主軸枝にフシコッカム・キャンカーが発生する。病菌は、地際の葉の離脱痕から侵入し、小さな紫褐色の斑点ができる。それが長円形に拡大し、周囲が侵されると、その主軸枝は枯死する。防除としては、り病枝を地際から切除して焼却する。
害虫では、カイガラムシ、ドクガ、オウトウショウジョウバエなどが発生するので、多発しないうちに殺虫剤を散布する。

8 加工利用

 完熟した果実は、微酸多甘のためそのまま生食することができるし、ヨーグルト、アイスクリーム、牛乳、生クリーム、加糖練乳などをかけて食べることもできる。また、食卓には、フルーツサラダとして他の果物と混ぜて出すこともでき、生食としての利用範囲も広い。
加工用としては、ジャム、ゼリー、ジュース、ソース、果実酒、シロップ漬け、菓子の副材料などである。特に、ジャムは種子が極めて小さいため、プレザーブ(原形が保たれたもの)としての利用が多い。

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