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中央農業試験場

1)播種期

年次春まき小麦秋まき小麦
大9 其適節は、土地、気候等により左右せらるヽこと多しと雖、秋蒔小麦は、九月上旬を適節とするものヽ如く、春蒔小麦は、成るべく早播するに利あるものの如し。(「小麥」彙報24)
昭8 其の適期は、土地及気候等により左右せらるること多しと雖も、秋蒔小麦は、道南地方は八月下旬乃至九月上旬にして、其の他の地方は九月上、中旬なり。春蒔小麦は、早春融雪後土地適度に乾燥し、耕鋤に差支なきに至らば直に播種するを可とす。(「小麥」彙報55)
昭29 融雪後、発芽に障害がなく、耕鋤整地等が容易にできうる状態になれば、春播麦類は努めて早く播種することが最も良好である(道立農試北見支場「春播小麦極早播試験」指導奨励上参考に資すべき事項) 
昭33  比較的温暖な道南においても、播種適期は9月10日前後であり、遅くとも9月20日までに終わることが必要である。(品種「大中山」「改良伊達早生」、道立農試渡島支場「秋播小麦の播期と生育について」指導上の参考事項)
昭36  狭畦幅、密植栽培においては播種期の早晩(9月5日~25日)を従来ほど重要と考えるにはおよばない。(品種「北栄」、道立農試北見支場「秋播小麦の多収栽培法及び晩播対策法について」指導奨励)
昭39  …あくまでも、播種の適期は9月中旬である。前作物と労働力の関係から大きな犠牲を払ってまでも、中旬にまく必要はない。…
 播種期の如何にかかわらず、全道どこでも、冬枯防除は大切であるが、特に晩播では…ぜひ励行しなければならない。…
 上川北部、北見西部内陸の西紋別郡、根室内陸等秋播小麦作の不良環境地帯は、冬枯と低収性から晩播栽培は無理である。
 天北地帯も晩播の限界を9月下旬までとすれば、晩播栽培は可能となる。
 上川南部山間、十勝山麓地帯は晩播栽培可能であるが、一般に低収のため、適期の増収対策が先行されるべきである。
 品種は「ホクエイ」を根幹とし、道南では「改良伊達早生」、十勝では「カチミノリ」を用いてよい…(北農試・道立農試各場「秋播小麦の晩播対策に関する試験成績」指導奨励)
昭53  上川地方では、播種期は9月上旬が望ましい。(品種「ムカコムギ」「タクネコムギ」、上川農試「上川地方における秋播小麦の播種期」指導参考)
昭58  やむを得ず晩播する場合でも、安定した収量を得るためには、道央では9月中旬、道央北部では9月中旬前半が播種期の限界であり、この場合には播種量を標準(340粒/m2)の1.5~2倍程度にする必要がある。(品種「ホロシリコムギ」、中央・上川・十勝農試「秋播小麦の冬損防止対策」指導参考)
 (小豆の)畦間に適期に播種された秋播小麦の収量は、標準耕種法により適期に播種されたものにくらべて遜色がなく、晩播に比べると年次的に安定していた。また、間作の場合、適期播種を行なうならば、あえて播種量を増すことはないと思考された。(品種「ホロシリコムギ」、中央・上川・十勝農試「秋播小麦の冬損防止対策・小豆畑への秋播小麦間作試験」指導参考)
 播種期が遅れるに従って減収し、年次によって多少の差異はあるが、9月10日以降では急激な減収をする。9月末の播種での収量は昭和53年播種を除いて、9月10日前後播種の収量の1/2以下であった。しかも、播種量を倍にしても、若干の増収がみられるのみで、播種量増加の効果は小さかった。(品種「ホロシリコムギ」、中央農試「転換畑における秋播小麦栽培技術の実証試験」指導参考)
 (道央羊蹄山麓では)播種期の遅れによる生育、収量への影響が大きく、播種期が遅れるにつれて冬損が多発した。9月中旬以降の播種では減収率が大きく、播種量を1.5倍としても収量回復は困難と考えられた。9月上旬播種で安定して多収が得られ、当地帯の播種適期と考えられる。(品種「ホロシリコムギ」、中央農試「ジャガイモシストセンチュウ防除確立試験」普及奨励)
昭61  (大・小豆畑への)ばらまき栽培の播種は、9月上旬までに行なうのがよく、9月中旬播きでは、発芽及び秋季の生育が劣り、減収しやすい。(中央・上川農試「大・小豆畑へのばらまき栽培による秋まき小麦の導入」指導参考)
昭62 発芽期まで日数に要する積算平均気温は100±10℃であった。播種期が早いほど多収を示し、品質も向上した。窒素9kg/10a、播種量510粒/m2を組み合わせた多肥密植栽培が望ましい。(十勝農試「十勝地方における融凍促進による畑作物の早期栽培技術確立」指導参考) 道央中部では9月上旬前半、道央南部では9月中旬をめどとする。(上川・中央農試「道央多雪地帯における『チホクコムギ』の安定栽培に関する試験-栽培適地の拡大-」普及奨励)
昭63  播種期の遅れにともない、子実収量が減収したが、「ホロシリコムギ」より「チホクコムギ」の減収率が大きく、その主な減収要因は穂数の減少であった。また、晩播では子実収量の年次変動が大きくなり、極めて不安定となった。
 晩播時の播種量増の効果は、晩播によって越冬前の生育量が極端に低下するため、越冬性が低下し、分げつも春期以降の希少に影響されることから、年次によってその増収効果が異なり、4箇年平均の増収効果は3~7%と小さく、標準播種期の収量水準に回復しなかった。
 「チホクコムギ」は「ホロシリコムギ」より播種期の遅れに伴う減収率が高いので、適期播種(9月中旬)を遵守する。晩播は成熟期が遅れ、穂発芽に遭う危険性が高まるので避ける。(十勝農試「十勝地方における『チホクコムギ』の安定生産に関する試験」指導参考)
平5 根雪前播種により、春播に比べて生育は早まり、穂数が確保され多収となった。播種期はなるべく根雪に近い時期が望ましい。(北農試「輪換初年目畑における春まき小麦の根雪前播種とチゼル耕による多収技術」指導参考) 
平8 初冬播を安定技術とするためには、根雪前に出芽させないこと、万一出芽しても鞘葉程度で留まることが必要である。このためなるべく根雪直前に播種するのが望ましい。…出芽に要する積算気温は平均118℃で、これを平年の根雪始に当てはめたところ、平年の根雪始めより20~25日前以降で安定的に越冬可能と考えられた。(中央・上川農試「春播小麦の初冬播栽培-播種期、播種量と施肥法について-」指導参考) 
平10  …最も安定した収量になる…播種期は9月20日前後であり、適期播種に努める。…播種期が早い場合は、千粒重、リットル重は安定するが、越冬前に過繁茂になると一穂粒数が減少することがあり、穂数が多くても収量に結びつかない場合がある。晩播は、年次によって、穂数の減少および千粒重の低下がみられ、収量が不安定である。また、低収となりやすく、子実蛋白質含有率が過度に上昇しやすい。(十勝・中央農試「道東における『ホクシン』の栽培法確立」指導参考)
平11 ブロードキャスタ等で雪上に散播する「雪上播種」の播種適期は11月下旬~12月上旬で、この範囲内では早いほど多収であった。これより早い播種では積雪の不安定による乾燥害、同じく遅い播種では発芽の遅延と活着前の種子の死滅などにより、それぞれ生存個体率が低下し収量減につながった。(中央・上川農試「春まき小麦の初冬播栽培-雪上播種、ムギキモグリバエ防除、窒素施肥と品質、品種間差-」指導参考) …播種適期の晩限は、道北、道央北部および道央羊蹄山麓では9月10日まで、道央中部の中で秋期の気象条件、越冬条件が比較的厳しい北部では9月15日まで、その他の道央中部、道央南部では9月20日までと考えられた。(中央・上川農試「道央・道北地域における『ホクシン』の栽培法」指導参考)
平14 「はるひので」は他の品種に比べ、晩播したときの子実重と千粒重の低下が小さかった。(上川・北見・中央農試、ホクレン「春まき小麦『春よ恋』、『はるひので』の品種特性に応じた栽培技術」普及推進) (「きたもえ」において)道央地域では初期生育の劣ることが茎数不足等による減収の要因となることがあるため、「ホクシン」で示した播種適期を厳守する。(中央・十勝農試「秋まき小麦『きたもえ』の高品質安定栽培法」普及推進)
 (道東における大豆畦間へのばらまき栽培法の)播種期は大豆の黄化始め以前を前提とし、9月10日以前が望ましい。9月10日以前に大豆の黄化が始まった場合は速やかに播種する。…畦間ドリルでは、播種は9月20日前後とする。(十勝・北見農試「大豆畦間への秋まき小麦栽培技術とその経営経済評価」普及推進)
平15初冬まき栽培は春まき栽培に比較して赤かび病発生程度ならびにDON汚染程度が低かった。春まき栽培においても、早期播種により赤かび病の発生およびDON汚染を低減することができた。4月20日を過ぎた播種ではDON汚染のリスクは高まるものと思われた。(中央・十勝農試「春まき小麦のデオキシニバレノール汚染低減に向けた当面の対策」普及推進) 
平16  (道央における)「キタノカオリ」では初期生育の遅れと雪腐病の発生が減収の要因となるため(「ホクシン」で示された)播種適期を厳守する。(中央・十勝農試、北農研「パン用秋まき小麦『キタノカオリ』の良質安定多収栽培法」普及推進)