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中央農業試験場

2)播種法・播種量

年次春まき小麦秋まき小麦
大9 播種の方法は、本道に於ては一般に條播するを常とし、畦巾及播種量は、土壌の肥瘠及耕種法の精粗により一様ならざれ共、土地肥沃なれば畦巾を廣くし、播種量を減ずべく、又馬力中耕器を用ひんとする場合、間作をなさんとするとき等には畦間を廣くすべし。畦巾は一尺二寸乃至一尺八寸、普通一尺五寸(注:約45cm)を適度とし、畦の方向は南北に通ずるを可とす。播種量は、秋蒔種は四升乃至五升(注:一升重を365匁(リットル重約760g)、千粒重を36gとするとm2あたり約150~190粒)、春蒔種は五升乃至六升を標準として可なり。
 播種には、普通手播するか又は喇叭播種器を用ふるも大面積の栽培に當りては、自然米國に於ける如く大農具の使用をなすべく、本道においては人力又は畜力の條播器あるも、未だ廣く使用せらるるに至らず。(「小麥」彙報24)
昭8 播種の方法は、本道に於ては一般に條播するを常となし、畦幅及播種量は気候、土壌の肥瘠及耕種法の如何により一様ならざるも、土地肥沃なれば畦幅を廣くし播種量を減ずべく、又畜力中耕器を用ひんとする場合、間作をなさんとする場合等には畦幅を廣くすべし。畦幅は一尺二寸乃至一尺八寸、普通一尺五寸を適度とし、畦の方向は南北に通ずるを可とす。播種量は、秋蒔、春蒔両種とも精選せる種子反当五升乃至六升を標準とすべし。
 播種には、普通手播するか又は喇叭播種器を用ふるも、大面積の栽培に當り、畜力用條播器(ドリル)を使用する場合には畦幅を六寸(注:約18cm)内外とし、播種量一斗一升(注:同上m2あたり約418粒)内外を適量とす。(「小麥」彙報55)
昭33  …従来、晩播、厚播を慣行とする農家もあるが適期適量(4升程度)播に改めることが小麦作としては望ましい。(品種「大中山」「改良伊達早生」、道立農試渡島支場「秋播小麦の播期と生育について」指導上の参考事項)
昭36  ドリル播機械があればドリル播にするのがもっともよい。普通は50cmの畦切りで、復路に往路の畦間をもう一度切って帰ることにより25cmの畦巾を作り、これを称して往復播と呼んだ…
 25cmの畦巾の場合は播巾は…実質9cmくらいとなる方がよい。…
 …大体の目安として25cm以下の狭畦巾では18~36L(1~2斗)くらいの播種量によって密植にした方がよく、特に晩播(北見地方では10月5日、適期播種より20日位遅い)密植の場合では36Lは必要である。
 肥沃地での栽培や多肥にして(硫安で10aあたり30kg以上)適期に播種する場合は18Lくらいの播種量でよく、晩播の場合はそれほど多肥にする必要はない。しかしながら、10俵以上の反収をねらう場合には、深耕、多肥施肥法等に一段の工夫を加える必要があろう。(品種「北栄」、道立農試北見支場「秋播小麦の多収栽培法及び晩播対策法について」指導奨励)
昭37 栽培様式:…「せまうね」の効果が顕著に見られるから、従来の畦巾(普通50~60cm)を1/2以下の往復播またはドリル播に改めた方が多収となる。この場合、播溝は敢えて広幅を要しないが6cmは確保すべきである。
 播種量:小麦の場合は2倍量(注:340粒/m2)以上で増収著しい…(品種「農林75号」等、道立農試北見支場「春播麦類の多条播栽培法について」普及奨励)
 
昭39  適期の多条播で、多肥(N,P5割増)の効果は密植(4倍量)に優る。(品種主に「ホクエイ」、北農試・道立農試各場「秋播小麦の晩播対策に関する試験成績」指導奨励)
昭44  散播栽培における収量は多条(ドリル)播の場合にほぼ匹敵し、その適期播きの標準播種量は大凡400~500粒/m2(10aあたり種子量は約15~20kg)と考えられるが、多肥の際はやや減量してもよい。
 発芽歩留は約70%と見込む(北見)。機種により播種精度を異にするので、特に調整と播き方には留意する必要がある。
 散播にあたっては、ブロードカスターを用いる場合は、施肥・播種は別々に散布する方がよい。覆土はカルチパッカーによることが望ましい。この場合の播種深度は平均1.7cm、グレエインドリルは3.7cmで、いずれも変異係数は大きい。(品種「ホクエイ」「ムカコムギ」、北見・十勝農試「秋播小麦の散播栽培における播種量に関する試験成績」指導参考)
昭58  やむを得ず晩播する場合でも、安定した収量を得るためには、道央では9月中旬、道央北部では9月中旬前半が播種期の限界であり、この場合には播種量を標準(340粒/m2)の1.5~2倍程度にする必要がある。(品種「ホロシリコムギ」、中央・上川・十勝農試「秋播小麦の冬損防止対策」指導参考)
 (小豆の)畦間に適期に播種された秋播小麦の収量は、標準耕種法により適期に播種されたものにくらべて遜色がなく、晩播に比べると年次的に安定していた。また、間作の場合、適期播種を行なうならば、あえて播種量を増すことはないと思考された。(品種「ホロシリコムギ」、中央・上川・十勝農試「秋播小麦の冬損防止対策・小豆畑への秋播小麦間作試験」指導参考)
昭61  (大・小豆畑へのばらまき栽培の)播種量は、510~760粒/m2の間で差がみられないため、510粒/m2(標準播種量の5割増、約22kg/10a)で良いと考えられる。(中央・上川農試「大・小豆畑へのばらまき栽培による秋まき小麦の導入」」指導参考)
昭63  9月中旬の適期播種における播種量を標準播種量(340粒/m2)より増やすことは、越冬性の低下、倒伏の発生からみて好ましくなく、子実収量もやや減収する傾向を示した。むしろ、播種量を標準播種量より減じた方がよく、標準播種量の1/2の播種量でも、標準播種量並の子実収量をあげることができた。…
 晩播時の播種量増の効果は、晩播によって越冬前の生育量が極端に低下するため、越冬性が低下し、分げつも春期以降の希少に影響されることから、年次によってその増収効果が異なり、4箇年平均の増収効果は3~7%と小さく、標準播種期の収量水準に回復しなかった。
 (適期播種において)170粒/m2においても340粒/m2播きに遜色ない収量が得られたが、各種障害(鳥害や砕土性など)による立毛本数の低下が考えられるので、播種量は、現行(340粒/m2)の20~30%減にとどめる。(十勝農試「十勝地方における『チホクコムギ』の安定生産に関する試験」指導参考)
平2 春まき小麦は紙筒移植により直播より多収であった。…育苗日数は10日苗が最も多収で、育苗日数が30日を超えると移植の増収効果が低下するため25日を限度とする。1ポット当たりの播種粒数は…3粒播とする。10a当り4万株と5万株では、収量に有意差がないが、5万株が増収の傾向があるので、5万株を目標とする。(品種「ハルユタカ」、中央農試「春まき小麦の移植栽培」指導参考) 
平5 (根雪前播種において)散播・無覆土の条件下での越冬生存率は60~70%であり、…播種量は500粒/m2が必要と判断された。(品種「ハルユタカ」、北農試「輪換初年目畑における春まき小麦の根雪前播種とチゼル耕による多収技術」指導参考) 
平6  適期播種期(9月上~中旬)における播種量を標準量(340粒/m2)の0.5~0.75倍まで少なくしてもほぼ同等の子実重が確保された。(品種「チホクコムギ」「ホロシリコムギ」、中央・上川農試「道央多雪地帯における秋播小麦の高品質安定生産」指導参考)
平8 初冬播では、越冬後の個体数が150~200個体/m2程度確保できれば安定的な収量が得られ、播種量は越冬個体率を勘案しても、340~400粒程度で十分であった。(品種「ハルユタカ」、中央・上川農試「春播小麦の初冬播栽培-播種期、播種量と施肥法について-」指導参考) 
平10  適期播種では255粒/m2が安定多収となる。早播では過繁茂を回避するために、170粒/m2とする。晩播は、播種量を340粒/m2とし、穂数を増加させることによって、収量の低下をある程度緩和できたが、年次によっては規格外が発生した。(十勝・中央農試「道東における『ホクシン』の栽培法確立」指導参考)
平11 (雪上播種について、)…試験の範囲では、適期播種の場合50cm程度の積雪深まで適用可能であった。播種床の差異による収量の差は認められなかった。(品種「ハルユタカ」、中央・上川農試「春まき小麦の初冬播栽培-雪上播種、ムギキモグリバエ防除、窒素施肥と品質、品種間差-」指導参考) 当該地域の秋期の気象条件および粘質がかった土壌が多く分布すること、倒伏の発生を軽減することを考えあわせ、播種量については「チホクコムギ」同様、標準の0.75倍量(255粒/m2)が適当と考えられた。(中央・上川農試「道央・道北地域における『ホクシン』の栽培法」指導参考)
平14 「春よ恋」の薄まき(255粒/m2)は倒伏を軽減する効果があるが、その効果は窒素減肥に比べ小さく、年次と場所により不安定であった。(上川・北見・中央農試、ホクレン「春まき小麦『春よ恋』、『はるひので』の品種特性に応じた栽培技術」普及推進) (道央の「きたもえ」において)播種晩限に近い場合、播種量を340粒/m2に増やすことは生育量の確保に有効である。(中央・十勝農試「秋まき小麦『きたもえ』の高品質安定栽培法」普及推進)
 (道東における大豆畦間へのばらまき栽培法の)播種量は(標準255粒/m2の)2.0~3.0倍が望ましいが3.0倍では冬損・倒伏の発生が懸念されるため、過繁茂になり易い圃場では留意が必要である。…畦間ドリルでは、標準の1.5倍である383粒/m2とする。播種時に適切な播種深度となるように注意する。(十勝・北見農試「大豆畦間への秋まき小麦栽培技術とその経営経済評価」普及推進)
平16  (道央における「キタノカオリ」の)播種量は「ホクシン」並(250粒/m2)で良いが、播種適期内でも晩限に近い場合、播種量を1.3倍(340粒/m2)程度に増やすことにより子実重を確保できる。(中央・十勝農試、北農研「パン用秋まき小麦『キタノカオリ』の良質安定多収栽培法」普及推進)
平17 「春よ恋」の初冬まき栽培に当たっては、以下の点を遵守する。(1)積雪が少なく土壌表層が軽く凍結することが多い南空知の南部や石狩南部などでの栽培を避ける。(2)越冬数の確保および倒伏軽減のため、覆土ができる条件で播種を行う。(中央農試、ホクレン「春まき小麦『春よ恋』の初冬まき栽培適性」指導参考)