場長室過去記事:20250820人工気象棟
2025.8.20 人工気象棟
当場にある実験施設のひとつ、人工気象棟をご紹介します。

現在の施設は、平成6年に当場が旭川市永山から比布町へ移転した際に建てられたもので、外観はやや年月を感じさせますが、しっかり現役で活躍しています。
ガラス室は12の「小部屋」に区切られており、ひと部屋ごと異なる温度に設定できます。建物の裏側にはエアコンの室外機がずらっと並んでいます。

人工気象棟は、主に水稲の品種開発に関わる実験を目的に設置されたものです。当初は低温の影響、冷害の克服のための研究が行われていました。
その後、気温の高低によって食味成分が変化することを確認する実験、さらに最近では高温に強い品種を開発するための基礎実験を行っています。

低温の克服から高温への対応へ、環境の変化にともなって目的は少しずつ変わっておりますが、私どもの試験研究をすすめるうえでこれからも重要な施設のひとつです。

環境の変化といえば、私が実家にいたころの記憶で恐縮ですが、水稲の出穂は夏休み中の8月初旬頃というイメージでした。最近では、7月20日過ぎに出穂しはじめるのがあたり前となってきています。夏休みを迎える頃には稲が出穂しているという、いまの子供たちの原風景は私のそれとは違っていくのだろうと遠い目をしてしまいます。
※当場の作況データでもこの30年で稲の出穂期は10日ほど早くなっています。
将来の気候変動に備えて試験をすすめておりますが、最近の経過には、その想定以上の変化が生じていないだろうかと思ってしまうこともあります(短期的な印象ですので、改めて客観的な評価が行われるべきことと思います)。
「天気には勝てないが、負けてもならない」
農業試験に携わる立場として、気候変動に対する基本的な姿勢として、この言葉を肝に銘じています。天気をコントロールすることは出来ませんが、あきらめることなく想定外への備えと対応力を少しずつでも積み上げていくことを大事にしたいと思います。
なお、お恥ずかしい限りなのですが、引いておきながら、誰が語った言葉かは存じておりません。北海道開拓のドキュメンタリー番組を、別の用事をしながら流し見していたときに、耳に残ったフレーズだったと記憶しています。もしご存じの方がいらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです。
さて、人工気象棟の小部屋は1辺2.8mほどの正方形をしています。

ほぼ4畳半です。入った瞬間、学生時代に暮らした下宿を思い出しました。
こんなスペースで暮らしていた自分をちょっと褒めてやりたい。
気候変動にどう対応していくか、道総研全体でも大きなテーマとして取り組んでいます(戦略研究)。