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酪農試験場

研究成果:1号の4

研究成果根釧農試 研究通信  創刊号

1992年11月発行)

4 チモシー基幹草地の早刈りによる植生変化とその対策

1. はじめに

近年における高泌乳牛のニ一ズに応えるためには、TDN(可消化養分総量)65%以上の良質粗飼料を確保することが重要です。そのためには、従来刈取り適期とされてきた出穂期よりも早く刈る早刈り体系を導入する必要があります。しかし、既往の早刈りを取扱った試験ではイネ科草とマメ科草の混播草地を対象とした試験例はなく、混播草地の草種構成におよぼす早刈りの影響は明かでありません。良質粗飼料を確保するためには、主要イネ科草とマメ科草の良好な混生割合を保つこともまた重要であり、マメ科草との混播草地についての早刈り体系を確立することが急務です。そこで、チモシー基幹草地を早刈りした場合の草種構成の変化を明かにし、良好な草種構成を維持しつつ、高栄養粗飼料を安定生産するための早刈り管理法を明らかにしようとしました。

2. 早刈り草地の刈取り管理

1)チモシー(TY)・ラジノクローバ(LC)混播草地を早刈りすると、乾物収量は出穂期刈りよりも低下し、TDN収量は増加する傾向を示しました。また、LCの優占とともにTYの茎数が減少し、その程度は2番草生育期間の短い区で著しく現われました(図l)。当草地の収量と草種構成は翌年出穂期刈りに戻すことによって回復しました(図2)。

2)チモシー単播草地を早刈りすると収量は低下しましたが、TY茎数は減少しませんでした。また、早刈りの継続によってLCおよび地下茎型イネ科草混生割合が増大する傾向が認められました(図3)。

3)当草地から得られた牧草の栄養価は1,3番草では良好でしたが、2番草で高いTDN含有率を得るためには生育期間を43-45日程度とする必要がありました(表l)。

表1 チモシー単播草地におけるTDN含有率%


刈取り時期

1番草

2番草

3番草

出穂期刈り

62.4

62.9

早刈り

2番草45日

68.5

69.0

68.4

2番草60日

68.3

63.3

66.4

3. まとめ

混播草地(植生区分1,2)では前年早刈りしていないこと、また、チモシー単播草地(植生区分3,4)は地下茎型イネ科草が10%以上認められないことが前提であり、これを満たす場合次の管理が適当です。

植生区分1,2草地:1番草は穂ばらみ~出穂始め期に刈り、2番草生育期間は出穂期刈り(50~55日)よりも長い55~60日とする。3番草は必要に応じて刈る。翌年は出穂期刈りに戻す。

植生区分3,4草地:1番草は穂ばらみ~出穂始め期に刈り、2番草の生育期間は40~45日とする。 3番草はl,2番草の低収を補うために刈る。ただし、早刈りによってLC混生割合が増大し植生区分l,2に回復した場合、および地下茎型イネ科草の侵入が10%以上認められた場合には、翌年出穂期刈りに戻す。

なお、施肥管理は北海道施肥標準に準ずる。

図1から図4までは省略