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酪農試験場

根釧農試研究通信:創刊号品種1

根釧農試 研究通信  創刊号

(1992年11月発行)

新牧草・飼料作物優良品種および馬鈴しょ新品種の紹介

1 チモシーに新品種登場

現在チモシーは早生品種が栽培面積の大半を占めています。しかし、収穫の期間はlか月に及ぶこともあり、刈り遅れによる栄養価の低下などの問題を生じています。このような問題を回避する最も有効な方法が早晩性を異にする幾つかのチモシー品種を草地毎に導入し、刈取りの適期の拡大を図ることです。チモシーには8つの優良品種がありますが(表1)、今回新たに中生2品種が加わりました。両品種とも北見農試の育成です。以下、新しいチモシーの2品種の紹介をします。なお、これらの品種の種子の販売は海外での種子生産の後になります。

○チモシー新品種「アッケシ」

1. 特性の概要

(表2)

早晩性:「アッケシ」はこれまでになかった「中生の早」です。根釧農試の場合「アッケシ」の出穂始は6月29日で、「ノサップ」より4日遅く、「ホクセン」より3日早くなっています。 ②病害抵抗性:根釧ではチモシーの病害として葉を侵す斑点病が最も重要です。この点「アッケシ」は斑点病に強い特長があります。今の優良品種のなかではトップクラスです。 ③耐寒性・越冬性:一般にチモシーの耐寒性は他のイネ科牧草より強いのですが、品種間差異もあります。検定の結果「アッケシ」の耐寒性は強です。越冬性も「ノサップ」並みに強く、萌芽後の再生が良好です。 ④収量性:「アッケシ」の乾物収量は全道平均で「ホクセン」比112でした。試験は一斉刈りをしていますので、出穂始の差を考慮しますと収量性は「ホクセン」よりやや多収です。根釧農試でも同様に多収でした。 ⑤混播適性:これまでチモシーの中・晩生品種とマメ科牧草を混播した場合、マメ科が優占しやすいことが時として問題になっていました。「アッケシ」のアカクローバに対する競合力は「ホクセン」より強くなっていますが、「ノサップ」ほどではありません。根釧農試では混播組合せを明らかにするため昨年から「アッケシ」を使って混播試験を開始しています。

2. 適応地帯と適応草地

「アッケシ」の適応地帯は北海道全域です。年2回刈りの採草地を主体に導入されていくことが期待されますが、放牧地への導入も可能です。

○チモシー新品種「キリタップ」

1. 特性の概要

(表2)

早晩性:「キリタップ」は「中生の晩」です。根釧農試の場合「キリタップ」の出穂始は7月3日、早生の「ノサップ」より8日遅く、中生の「ホクセン」より1日、「アッケシ」より4日遅くなっています。 ②病害抵抗性:斑点病抵抗性は現在の主要な栽培品種「ノサップ」並みで、やや強です。 ③耐寒性・越冬性:耐寒性は強です。越冬性は「ノサップ」並みで、萌芽・早春の再生が良好です。 ④収量性:「キリタップ」の乾物収量は全道平均で「ホクセン」比109でした。出穂始の差を考慮しますと収量性は「ホクセン」を上回ります。この傾向は根釧農試でも同様でした。 ⑤混播適性:「キリタップ」のアカクローバに対する競合力は「ホクセン」より強いのですが、「ノサップ」ほど強くはありません。根釧はアカクローバの生育が旺盛です。根釧農試では「キリタップ」をうまく使いこなすため3年前から混播試験を開始しています。

2. 適応地帯と適応草地

「キリタップ」の適応地帯は北海道全域と東北の北部地域です。年2回刈りの採草地を主体に今後導入されていくことが期待されますが、放牧地への導入も可能です。

表1 チモシー優良品種の早晩性

表2 チモシー新品種「アッケシ」と「キリタップ」の主要特性

注1)斑点病は数字が大きいほど病気が多い。 2)斑点病が多発した播種年の成績。

3)根釧農試の耐寒性検定試験による。 4)越冬性は数字が小さい程良好。

5)2、3年目の年間平均収量。