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酪農試験場

根釧農試研究通信:4号の2

根釧農試 研究通信  第4号

1994年3月発行)

研究成果

2.汎用型グラスシ-ダの開発

酪農施設科

1.試験のねらい

草地更新において、砕土、施肥・播種・鎮圧など各作業を複合化し、工程数を短縮させた履帯トラクタ用のグラスシ-ダを開発し、草地整備工法の低コスト化を図ってきました。しかし、平坦で広い園場では作業効率は高いものの、区画の狭い園場では作業が困難であることなどの問題が指摘されていました。そこで、グラスシ-ダの軽量化を図り、車輪トラクタでも作業可能なグラスシ-ダの開発を行いました。

2.試験の方法

試験は根釧農試および弟子屈町の永年草地で行いました。播種前の播種床造成には耕起(24インチ2連プラウ)砕土(ディスクハロ-)、土壌改良剤散布(ライムソワ)、鎮圧(ロ-ラ)を使用しました。播種後、出芽・定着状況、収量など調査を行いました。

3.試験の結果

(1) 開発したグラスシ-ダは従来機より約1トン軽量化し、車輪トラクタのけん引で作業可能です。また、履帯トラクタ直装でも作業ができます。施肥・播種部は溝ロ-ラによる繰り出しで、面積当たりの施肥・播種量の設定はギア交換により行い、種子と肥料は幅20㎜、長さ32㎜の長穴から繰り出されます。鎮圧はケンブリッジ型のゴム被履のロ-ラです(表1、表2省略)。

(2) 施肥・播種は溝ロ-ラによる繰り出しであるため、作業速度が変わっても、面積当たりの施肥・播種量は一定です。

(3) グラスシ-ダは種子と肥料を手で混合し、施肥・播種する方式であるため、肥料と種子の混合割合の変動が懸念されました。しかし、ホッパ-内の肥料の量により少しは変動が見られたが、混合程度もおおむね良好で、ほぼ設定値どおりに施肥・播種が可能です。ホッパ-内の肥料がなくなる直前に、種子数が大幅に減少するため、早めに肥料・種子を補給する方が好ましい(表3省略)。

(4) グラスシ-ダの施肥・播種の作業速度は、車輪トラクタけん引では、速度2.0m/s程度で作業可能である。履帯トラクタでも車輪トラクタと同程度の速度で作業可能と考えられます。慣行法のブロ-ドキャスタによる施肥・播種は4.0~5.0m/sと高速です。グラスシ-ダにより鎮圧行程が省略されましたが、施肥・播種の作業速度が慣行法より遅いため、グラスシ-ダによる施肥・播種作業のha当たりの作業時間は慣行法と同程度です(表4省略)。

(5) 平成4年度播種した牧草の出芽・定着状況はA、B区の出芽数がC区に比べてやや少なかった。播種当年の初期成育量はA区がC区に比べて、10%程度劣りました。また、中間調査時にもA、B区がC区より10%程度劣りましたが、これはA、B区の播種量がC区に比べ、25%少なかったためと考えられます。一般に牧草出芽数はm当たり2,000本以上であれば、初期から高密度が得られるという評価からすれば、いずれの区も十分な出芽数でした。翌年の1、2番草収量には区間差が認められませんでした(表5省略)。平成5年度播種の出芽・定着状況はいずれの区も十分な出芽数を確保していました(表6省略)。

以上より、出芽・定着状況、収量とも慣行法と比べて、差が認められず、グラスシ-ダによる施肥・播種は慣行法と比べて、遜色はないと考えられます。

この試験は、火山性土壌で行いましたので、洪積土や泥炭土への適応性は未検討です。施肥・播種の作業精度をより向上させるには、混合機などを使用し、種子と肥料を均一に混和する方が好ましいと考えられます。また、ホッパ-内の肥料が少なくなると、播種量が少なくなる傾向があるため、残量に注意し、早目に補給する方がよいでしょう。