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酪農試験場

根釧農試研究通信:4号の4

根釧農試 研究通信  第4号

1994年3月発行)

研究成果

4.乳牛へのバイパスアミノ酸製剤添加効果

酪農第二科

1.試験のねらい

高泌乳牛へ蛋白質を供給する場合には第一胃内での分解性を考慮する必要があるとされ、さらに非分解性蛋白質のアミノ酸組成を適正にすることにより効率的な乳合成が可能と考えられています。

そこで乳合成の制限アミノ酸といわれるメチオニンおよびリジンのバイパス製剤を泌乳前期の乳牛に給与して、乳量および乳蛋白質の向上効果を検討しました。

2.2つの試験を実施

試験1では経産牛16頭を用い、バイパスメチオニン製剤(DLメチオニン30g/日)の添加試験を行い、試験2では経産牛14頭を用い、バイパスメチオニンおよびバイパスリジン製剤(DLメチオニン15g+リジン20g)の添加試験を実施しました。

供試飼料は混合飼料(牧草サイレ-ジ;圧ぺんとうもろこし:大豆粕を乾物比で50;38~40:10~12)としました。

3.乳蛋白質は向上したが、乳量はかわらず

乳蛋白質率は、試験1の3~8週では添加区3.07%、対照区2.87%、試験2の3~12週では添加区3.00%、対照区2.80%と添加区が各々0.2ポイント高くなりました(表1、図1、2省略)。また、乳成分率は遺伝的要因に強く影響されるため全産次の305日泌乳成績と比較すると、添加区が対照区より試験1では0.23ポイント試験2では0.16ポイント高くなりました(ともにP<0.05)。

しかし、実乳量および4%補正乳量は試験1、2とも処理間に差がみられませんでした(表1省略)。

4.添加効果は血液にも表れる

血清遊離メチオニン濃度は試験1で添加区、対照区各々3.47、2.23umol/dl、試験2で各々2.57、2.08umol/dlと、添加区が添加量に比例して高くなりました(表2省略)。しかし、血清遊離リジン濃度は、バイパスリジン製剤を添加した試験2でも添加区と対照区の間に差が見られず(表2省略)、今回の試験条件ではバイパスリジン製剤の

添加効果は少なかったものと考えられました。

5.エネルギ-の充足が基本

養分摂取量および養分充足率は、試験1、2とも泌乳前期としてはほぼ充足され(表3省略)、分娩後の体重の減少は+4㎏~-22㎏と少なかった。このように、バイパス製剤の添加効果が認められるのは養分がほぼ充足されている場合であり、乳蛋白質率の向上にはエネルギ-の充足が基本となります。

6.飼料構成の違いで添加効果が異なるのか

第1胃内で合成される微生物蛋白質のアミノ酸組成は、飼料構成が異なる場合でもあまり変わらないことから、一般的な飼料条件では添加効果が期待されます。しかし、バイパスメチオニンに富む魚粉等の飼料が利用されている場合には添加効果が少ないと考えられます。

これらのことから、バイパスメチオニン製剤の添加により、泌乳前期の乳蛋白質が向上することが明らかとなりました。