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酪農試験場

時の話題:4号の2

根釧農試 研究通信  第4号

1994年3月発行)

**時の話題**

2.Space cattle goes to USA

酪農施設科

1月31日から2月5日までフロリダ州オーランドで開催された米国乳房炎協議会(National mastitis Conference, 以後 NMC)と国際酪農施設協議会(International Dairy Housing Conference, 以後 DHC)に出席し、その後ウイスコンシン州とカリフォルニア州で農場と農業機械のショーを見てきました。

NMCは毎年開催されていますが、IDHCは10年ごとにASAE主催で開催されています。今回はASAEがNMCをサポートし、日程を合わせて行いました。

1.フロリダ州オーランド

オーランドはフロリダ半島のほぼ中央に位置した観光都市です2月の最高気温は

20度を超えると聞いていたので半袖シャツを持っていったのですが、日本と同様寒波が襲来しており、フロリダ半島付け根では雪が降るほどで、オーランドも肌寒い感じでした。

「NMCとIDHC」

NMCは乳房炎に関する調査研究を検討する協議会で、その範疇は乳房炎の予防や治療からミルカーの規格、搾乳ロボットまで広範囲にわたっています。今回発表された課題は永世関係が

11、施設・機械関係が14ありました。ミルカ関係ではエアインジェクタを使ったときの洗浄理論やミルカと牛の心理的相互作用をなど新たな知見を得ることが出来ました。北大のツェンコバ氏は近赤外線を使った乳房炎の検出方法を発表し好評を得ていました。

IDHCでは今流行のゴムチップマットレスの研究発表が多く見受けられました。また、会場がフロリダと言うこともあり、牛舎の暑熱対策に関する発表もありました。ヨーロッパからの参加もあり、アニマルウエルフェアや糞尿処理について興味深い発表がありました。松田助教授(北海道大学)は糞尿処理についてポスターセッションの場で発表しましたが、ちょうど隣のブースでドイツから来た大学院生が今私たちが取り組んでいるのと同じ糞尿の固液分離機械について発表しており、原施設科長(当時)は熱心に意見を交換していました。

「エクスカーションツアー」

最終日には見学ツアーがあり、4つの農場を見ることができました。オーランド近郊はオレンジ栽培を行っている農家が多く、酪農は少ないため3台のバスに分乗し、2時間ほどかけてオキチョビー湖周辺の農場に行きました。

4農場すべて企業酪農で2,000~6,000頭の乳牛を有しており、30,000ガロン(114,000リットル)/日を出荷しているところもありまあいた。飼養形態はフリーストールで敷き料はゴムマットだけの所や火山灰が使われていました。フリーストール内やミルキングパーラの除糞はすべてフラッシングシステムでリキッド状のスラリーはスクリーンセパレータで固液分離され、液分は12エーカ(5ha)ほどあるラグーンに貯められます。また、搾乳前にホールディングエリア内で床に設置されたシャワーで乳房を洗浄していましたが、シャワーの勢いはかなり強く、毎日のこととか思いますが、牛が驚いて逃げまどうほどでした。しかし、濃厚飼料の与え過ぎか下痢気味の牛が多く、通路はドロドロした感じでした。牛舎の暑熱対策として牛舎内の空気を動かすためのファンやスクリンプラーが設置してありました。

ミルキングパーらはとにかく大きく36頭Wのヘリンボーンパーラーでは片側を1人で作業しており、ユニットの脱着などの作業の早さは目を見張るものがありました。ほとんどの農場でプレディッピングをしていますが、溶液を乳頭から拭き取る作業も早く、これでは完全にふき取れないだろうという感じでした。ちょうどその頃、米国ではBSTという成長ホルモンが盛んにテレビなどで報じられており、消費者団体がBSTの使用禁止を求め牛乳を廃棄している映像が映し出されていました。今回の見学ツアーの中でも、農場のマネージャーへBSTに関する質問が飛び交っていました。

「観光」

オーランドはリゾート地で周辺にはディズニーワールドやユニバーサルスタジオなどの観光施設が大変多い場所です。2月はオフシーズンでしたが、それでも観光客は多く、特にリタイアした老人が多いのには驚きました。空き時間を利用しNASAへ行き、発射直前のスペースシャトルを見てきました。その3日後の早朝、パンケーキを食べながら発射の瞬間を見るつもりでしたが、残念ながら時間を間違えて白い奇跡と星のようにひかる点しか見ることが出来ませんでした。このようなリゾート地は1~2週間ヴァカンスをとってゆっくりと楽しみたいものです。

2.ウィスコンシン州

オーランドから空路、シカゴへ飛び、レンタカーでウィスコンシン州ウィンフィールドの家族経営の酪農家を見てきました。

ここの酪農家は繋ぎ飼い牛舎からフリーストールに移行したばかりで、ミルキングパーラはまだ制作中でした。フリーストールに移る前は経産牛で40頭しか飼っておらず、移行後は80頭にしたそうです。日本では考えられませんがフリーストールへの移行は銀行が薦め、銀行が$30万融資してくれたといっていました。

ここでも敷き料の代わりにゴムチップのマットレスを使っており、シートの上にはとうもろこしの収穫残査を載せていました。ミルキングパーラーは4Wのオートタンデム方式でミルカーは6台しか設置しておらず、頭数が増えてから増設する予定だといっていました。パーラのすぐ横に事務所があり、そこの窓からパーラとホールディングアリアが観察できるようになっており、主人は奥さんの搾乳作業と牛を観察するといっていました。

3.カリフォルニア州

「カリフォルニア農機ショウ」

カリフォルニアという土地柄もあり、酪農関係、果樹関係の農業機械が展示されていました。ミルカ関係で数社、パーラーのモデルを展示していましたが、配管部分をステンレスのカバーで覆ってしまうJ社方式がほとんどのメーカーで採用されていました。フラッシングに対応した固液分離機や使用済みサイロフィルムを圧縮梱包する機械など日本にはまだ輸入されていない珍しい機械もありました。

ショーに来ていた人たちには家族連れも多く、子供が楽しめるブースや主婦のための料理教室など老若男女が楽しめるような工夫がされていました。

「カリフォルニア酪農」

フロリダと同じく大規模企業経営を2ヶ所見学してきました。施設はほぼ同じでしたが、フロリダと違って牛舎周辺が舗装され、芝生の手入れが行き届いていました。また、カリフォルニアは雇用労働者のほとんどがメキシカンで自給$3程度で雇われているそうです。

「食事」

オーランドでの朝食は日本でも有名なハンバーガー屋、飽きもせず、フレンチフライにケチャップをつけて食べるのが癖になりました。ここで最も美味しかったのはレタスで、取れたての新鮮パリパリを食べられました。

カリフォルニアでは朝食スクイーズしたオレンジジュースの味が今でも忘れられません。