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酪農試験場

根釧農試研究通信第4号:品種1

根釧農試 研究通信  第4号

1994年3月発行)

新牧草・飼料作物優良品種および馬鈴しょ新品種の紹介

1 馬鈴しょ新品種

○ばれいしょ新品種「根育26号」

でん粉原料用ばれいしょは、原料基準価格の引き下げによる収益性の低下やでん粉の輸入自由化により、情勢は今後ますます厳しくなることが予想されており、畑作の輪作体系維持の上からも問題が指摘されています。また、ジャガイモシストセンチュウの発生面積の拡大も深刻な問題となっており、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持った収益性の高い品種の育成が強く求められていました。

「根育26号」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性のでん粉原料用品種の育成を目標に、昭和58年に北海道立根釧農業試験場において高でん粉価、Yモザイク病抵抗性「コナフブキ」を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性の「トヨアカリ」を父として人工交配を行い、選抜を図ってきたものです。道内各地の農業試験場および現地における試験の結果、でん粉重が「紅丸」や「コナフブキ」よりも多く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性であることが評価され新品種となりました。

1.特性の概要

そう性は中間型で、茎長は「紅丸」よりやや長いですが、茎はやや太いので倒伏は「紅丸」より少ない傾向にあります。頂小葉および小葉は「紅丸」よりやや小さく「コナフブキ」並で、小葉の着生は「紅丸」よりやや疎で「コナフブキ」並なので、地上部は「コナフブキ」に似ています。また、「トヨアカリ」のような生育後半の葉の巻き上がりもみられません。

花の大きさは「コナフブキ」より大きく「紅丸」並です。花の色は「コナフブキ」よりやや濃い赤紫系で、花弁の先端は白です。また、「コナフブキ」同様自然結果が多く見られます。

塊茎は扁球形で、皮色は黄褐、目は「紅丸」よりやや深く、「コナフブキ」同様淡赤色です。肉色は白です。

萌芽期および開花期は「紅丸」および「コナフブキ」よりやや遅く、塊茎の早期肥大性も遅いため、早堀りには適していません。枯凋期は「紅丸」および「コナフブキ」より遅い晩生です。

上いも数は「紅丸」および「コナフブキ」より少ないですが、上いも平均一個重は大きく「紅丸」並かやや大きいです。根釧農業試験場における6ヶ月の平均では、10a当り上いも重は「紅丸」比90%と少ないですが、でん粉価が22.7%と「紅丸」より6ポイント以上、「コナフブキ」より約1ポイント高いので、10a当りでん粉重では「紅丸」比126%と非常に多く、また「コナフブキ」よりも多いです。施肥量に対する反応は、多肥によるでん粉価の低下が「紅丸」より少なく、でん粉の増収効果も大きい傾向にあります。

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有しており、発生圃場においてもシストの形成がほとんど認められず、収穫時の土壌中の卵密度は植付時の10%以下に低下します。疫病圃場抵抗性および塊茎腐敗抵抗性はやや強く、さらに、Yモザイク病抵抗性を有しています。そうか病に対しては「紅丸」並に弱いですが、粉状そうか病抵抗性は強いです。

でん粉の灰分およびりん含量は「紅丸」より多く「コナフブキ」より少ないです。でん粉粒子の大きさは「コナフブキ」より大きく「紅丸」並です。アミログラム最高粘度は「紅丸」よりやや高く「コナフブキ」並です。最高粘度時の温度は「紅丸」および「コナフブキ」よりやや高いです。フレークダウンは「紅丸」および「コナフブキ」よりやや小さいです。

2.栽培上の注意

栽培適地は北海道一円です。栽培にあたっては、初期生育および塊茎形成が遅く、早期肥大性がやや劣るので、浴光催芽によって生育の促進を図って下さい。また、疫病圃場抵抗性はやや強いですが、防除低減可能なレベルではないので、防除は「紅丸」および「コナフブキ」に準じて行って下さい。