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酪農試験場

根釧農試研究通信:第6号品種1

根釧農試 研究通信  第6号

1996年3月発行)

新牧草・飼料作物優良品種および馬鈴しょ新品種の紹介

1 ばれいしょの少肥・減農薬向け適品種

一般的にばれいしょの品種は減化学肥料の疫病無防除では減収程度が大きい作物ですが、輸入品や本州産品と競合するときには低コストとクリーン農業が有力な武器となります。そこで、現状の品種と育成系統の中に減化学肥料や疫病無防除で使えるものがあるのかないのか試験しました。

1.減窒素栽培の適品種

施肥反応の大きい窒素肥料について、施肥量を標準量と半量施与と無施与で試験しました。

食用品種では「男爵薯」・「ワセシロ」・「メークイン」、でん粉原料用では「紅丸」・「コナフブキ」を供試しました。

減窒素では茎長が短くなる他、無窒素では枯凋期が逆に遅延しました(表1)。一方、収量は成績に乱れのあった「メークイン」を除けば「ワセシロ」の減窒素栽培における減収率が低い傾向にありました。しかし、収量構成形質ではでん粉価を除けばいずれも低下し(表2)、品種間差も小さく、かなりの減収を覚悟する必要があります。

2.減農薬向け適品種

ばれいしょ栽培において防除回数が最も多い疫病の圃場抵抗性品種を活用した無防除を含めた減防除を検討しました。

「コナフブキ」等、従来型品種の多くは疫病菌に罹病しない真性抵抗性を持っていましたが、疫病菌レースの分化により、現在は「紅丸」等、真性抵抗性を持たない品種と同様の防除回数を必要とする背景があります。一方、圃場抵抗性はすべての疫病菌レースに対して、罹病後の病斑拡大が極ゆっくりしていて実害のないことを期待するものです。

5年間で多くの品種や系統を供試しましたが、「農林1号」は従来の一般的品種の代表として、「マルチダ」は平成5年に奨励品種となった、疫病防除回数を減じることができる圃場抵抗性品種の代表として、「根育29号」は疫病無防除も期待できる有望系統の代表として表3に結果を示しました。圃場抵抗性程度には強弱がありますが、極強度の抵抗性を有するこの2品種系統は減防除や無防除において、疫病罹病葉面積率が生育の後半まで極めて低く、結果として完全防除と大差ない収量(上いも重)でした。なお、「農林1号」と「根育29号」の減防除、「マルチダ」の無および減防除の収量は試験誤差により完全防除と同様以上になったものと判断されます。最後に「男爵薯」と「メークイン」は「農林1号」以上に減防除栽培での減収が大きい品種であることを付け加えておきます。