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酪農試験場

根釧農試研究通信:7号の2

根釧農試 研究通信  第7号

1997年3月発行)

研究成果

2.麦類および牧草類の敷料用としての特性

作物科

1 試験のねらい

草地酪農地帯では飼養規模を拡大した経営を中心に敷料の必要量が増加しています。このため敷料の購入が増加するとともに、敷料が不足する場面も生じています。

根釧管内においても麦稈の購入量は平成7年度には2,783tに達しており、今後、必要量を安定的に確保するためには、敷料の自給体制を強化する必要があると考えます。

そこで本試験では草地酪農地帯において自家生産可能な敷料用作物の探索を行いました。

2 試験の方法

1) 敷料用作物探索試験

麦類(春播き、秋播き)および牧草類の合計9作物・草種を供試して敷料としての適性を評価しました。その際、生産性は乾物収量を主に、作業性では耐倒状性に優れ、乾燥調製が容易となるよう乾物率が高いものを選定しました。また、家畜毒性の点からマイコトキシン様有害物質を産生する赤かび病(Microdochium nivale、Fusarium graminearum)の発生状況を調査しました。

2) 敷料用作物の物理生

吸水率測定:バケツに水道水を満たしサンプル浸し、経時的にサンプルを取り出す方法で現物に対する吸水率を算出しました。硬さ測定:長方形の容器に細断したサンプルを詰め、20㎏重の荷重をかけて、その沈下量を測定しました。

3) 農家現地実証

標津郡標津町古多糠の酪農家圃場においてえん麦「アキワセ」を生産し、その生産麦稈を牛舎内で購入小麦稈と比較しました。

3 試験の結果

1) 敷料用作物採索試験

・春播き麦類では、「アキワセ」、「ヒダカ」、「トチユタカ」、「DULA」などのえん麦品種が有望と考えられました。

・えん麦の栽培方法は一般の酪農家が所有する機械体系を想定した散播栽培でも条播栽培と同等の結果でした。

・秋播き麦類は全般に多収でしたが、各作物ともに赤かび病の発生が認められました。したがって、赤かび病の発生が懸念される地帯への導入は家畜毒性の点から難しいと考えられました。

・牧草類は麦類に比べて耐倒状性に劣り、また総体の乾物率が全般に低く、乾燥調製が容易でないことが推察されました。

・牧草類の中では敷料として多く利用されることが想定される2番総収量が供試草種・品種中もっとも高く、かつ、年間合計収量も多収であるチモシ-早上品種が有望と考えられます。

以上のことから、根釧地帯のような草地酪農地帯において敷料を自給する場合には、えん麦もしくはチモシ-極早生品種が有望と考えられます。

2) 敷料用作物の物理性

・麦類と牧草類の吸水性および硬さに大きな差は認められませんでした。

・チモシ-は切断により吸水率が向上しました(図1省略)。

3) 農家現地実証

・えん麦稈実証栽培では、栽培・乾燥調製状の問題点は少なく(表1省略)、酪農家の感想は概ね良好でした。

・自家生産されたえん麦稈と購入小麦稈の敷料としての利用上の差は認められませんでした。

・敷料用作物としてえん麦を酪農家へ導入する場合には、草地面積に余裕があり、また、耕起などの作業機械を装備していることが前提となると考えられました。、