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酪農試験場

根釧農試研究通信:7号の4

根釧農試 研究通信  第7号

1997年3月発行)

研究成果

4.フリ-スト-ル牛舎施設の低コスト化

酪農施設科

1 試験のねらい

生産コスト低減、省力的牛群管理をめざして、フリ-スト-ル・ミルキングパ-ラ-方式へ移行する農家が急増していますが、建設コストが高いため、既に多額の負債を抱えている多くの酪農家にとって新たな投資をすることは非常に厳しいものです。そこで、既存牛舎施設の積極的な活用技術を明らかにするとともに、牛舎施設建設時のコスト低減法と、簡易な牛舎構造のフリ-スト-ル牛舎を設計・開発によるフリ-スト-ル牛舎施設の低コスト化を検討しました。

2 試験の方法

1)既存牛舎の有効活用法

(1)現地事例調査:国内外の10事例について、改造前後の施設緒元、搾乳作業状況を調査しました。

(2)既存牛舎の改造法:典型的な間口10.8mの牛舎の改造方法を検討しました。

2)低コスト牛舎施設の開発

(1)現値事例調査:低コスト建設している2事例について調査を実施しました。

(2)簡易フリ-スト-ル牛舎

①構造・設計:フレ-ム構造の簡易フリ-スト-ル牛舎を設計し、16牛床の牛舎を建設しました。

②乳牛適応性:牛床数16の簡易フリ-スト-ル牛舎において乳牛の利用状況を解析しました。

③構造・強度試験:フレ-ムの載荷試験により、設計積雪深による適応範囲を検討しました。

3 試験の結果

1) 既存牛舎をフリ-スト-ルへ改造する場合は、間口10.8mでは、改造牛舎内には2列あるいは3列のスト-ルを設置することが出来ます。天井が低く換気が不良な牛舎では、壁面の解放や棟部の解放を行って換気量を十分確保してください。また、ミルキングパ-ラ-への改造では間口10.8mの場合、簡易なフラットバ-ン、アブレストの改造はもとより、ピット式パ-ラ-への改造も十分に可能です。搾乳時の作業姿勢、改造費用、将来計画などを考慮してどのパ-ラ形式が最適かを判断してください(表1、図1省略)。

2) 施工法による低コスト化では牛舎分割法、並びに帆布式牛舎の事例調査をしました。帆布式牛舎では屋根工事価格は従来工法に比較し約65%で可能です。

3) 簡易フリ-スト-ル(ケンネル)牛舎の開発では、英国で利用されているケンネル牛舎をモデルに、ホルスタイン用に設計しました(図2省略)。フレ-ムは幅15㎝、板厚3㎝あるいは4㎝の柱で、母屋、隔柵、牛床の各部材をはさんで作ります。このフレ-ムをパドックなどの舗装した場所で、3.0m履して向かい合わせに置き、1.2m間隔で水平方向につなぐことで間口8.2m程度の成牛用のフリ-スト-ル牛舎となります。牛床長さは2.6mで軒高さは2.5~3.0mで建設できます。壁面のカ-テンの開閉とオ-プンリッジで換気します。

建築費は、根釧濃試での材料費をもとに40頭規模の簡易牛舎で試算した結果、自家施工の場合、基礎を除いた建物部分だけで1頭あたり約46千円程度となりました。

乳牛適応性の検討では、横臥起立動作を大きく阻害しませんでした。牛床の利用率のうち、横臥可能な時間に占める横臥時間の割合(表2省略)は、全日平均で41~54%で一般のフリ-スト-ル牛舎での横臥割合と同程度であり、牛床素材、敷料および換気等に留意すれば構造的な問題はありません。

フレ-ム強度は、構造計算、および強度試験の結果、1m~1.5m程度の静的積荷重であれば十分な耐力があることが確認されました。しかし、積雪荷重に応じた屋根部材の補強、屋根から落雪の除去をしてください。