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酪農試験場

研究成果:8号の5

根釧農試 研究通信  第8号

1998年3月発行)

研究成果

5 乳牛舎用ゴムチップマットレスによる牛床改善効果

酪農施設科

1.試験のねらい

フリーストール牛舎では牛床利用率を向上させるために、さまざまな構造の牛床が開発されています。乳牛舎用ゴムチップマットレスは乳牛の利用率の高い牛床の一つで、自家施工が可能なゴムチップばら詰め方式と、表面をシートで被覆する筒状方式とがあります(図1)。本試験では、それぞれの方式で作られたマットレスの構造と耐久性、ゴムチップおよびシートの素材特性の検討と、ゴムチップマットレス設置前後での乳牛行動解析によりマットレス設置による牛床改善効果を検討しました。

図1 ゴムチップマットレスの構造(上:ばら詰め、下:筒状)

2.試験の方法

使用資材特性試験として被覆シートの引っ張り強度およびゴムチップの粒径分布、沈下量を調査しました。試作牛床マットレスの特性試験では、ばら詰め、筒状各マットレスの形状変化、ゴムチップ水分

変化を検討し、また、乳牛行動解析による牛床利用試験ではゴムチップマットレス設置前後における乳牛行動をビデオ撮影により解析しました。

表1 つなぎ牛舎での牛床位置別の横臥時間割合(%、筒状マットレス設置)

(牛床2を除いたマットレス設置前後の横臥時間割合には有為水準1%で有意差あり)

3.試験の結果

1)使用資材の特性試験

被覆シートの強度は、引っ張り破断強度が185×185kgf/3cm以上(カタログ値)で、かぎ裂きしにくく裁断面の糸がほつれないものが必要です。また、利用5か月後の牛床後部のゴムチップ水分は、防水区で1.8%で、防水がない区ではふん尿の混入により16.0%と高くなりました。そのため、マットレス用被覆シートには防水性が必要でした。

2)試作マットレスの特性試験

被覆シートをしない試作筒状マットレスの単独設置では、谷部分の除糞ができずマットレスの下にふん尿、敷料が堆積することや、筒用シートの防水性がないためマットレスを乾燥状態に保てないこと等により連続使用はできませんでした。しかし、防水性のない筒状マットレスでも、表面を防水性シートで被覆することにより内部の汚染が防止されるので利用が可能でした。

3)乳牛行動解析による牛床利用試験

筒状マットレスを設置したつなぎ牛舎では、乳牛の起立横臥パターンは管理作業に制約されているために、設置前後で大きな変化はみられませんでした。しかし、牛床毎の横臥時間割合は設置後が平均で7%高くなりました(表1)。

筒状マットレスを設置したフリーストール牛舎では、平均横臥頭数および横臥率が増加しました。牛床毎の横臥時間割合は平均で10.3%向上し、平均連続横臥時間は設置前48分から設置後73分へ延長されたことから、フリーストール牛舎においてはマットレス設置により高い牛床改善効果がみられました(図2、表2)。

粒状と粉状のゴムチップを用いたばら詰めマットレス設置直後の牛床利用状況では、粒状の方が横臥時間割合が大きく推移しました(表3)。また、均平半年後におけるマットレス表面の高低差は粒状ゴムチップが大きく120mmで、粉状ゴムチップは83mmでした。どちらも起立横臥に問題はありませんが、ゴムチップの均平作業が必要です。この時の平均横臥時間割合は設置直後の42.6%から46.0%に増加しており、粉状、粒状にかかわらずゴムチップマットレスによる牛床改善効果は維持されていました。

図2 根釧農試フリーストールでの牛床横臥頭数

(筒状マットレス設置前後の各5日間の平均)

表2 フリーストール牛舎における平均横臥時間割合と連続横臥時間(筒状マットレス設置)

(マットレス設置前後の横臥時間割合には有意水準1%で有意差あり)

表3 乾乳牛によるマットレス設置条件による横臥時間割合(%、ばら詰めマットレス設置)

(マットレスH6の粒状ゴムチップと粉状ゴムチップ間のみに有意水準1%で有意差あり)