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酪農試験場

研究成果:9号の11

根釧農試 研究通信  第9号

1999年3月発行)

研究成果

11.簡易糞尿貯留施設の設計と雨水の蒸発量調査

酪農施設科

1.試験のねらい

糞尿貯留施設の実態調査によれば、農家所有の尿だめの容量は50~100日分の貯留容量しかなく、河川等への流出や不適切な期間での散布が懸念されます。これを防ぐためにも貯留容量の増大が求められていますが、施設建設費が高く低コストでの貯留施設の開発が要望さまれています。そこで、自家施工が可能で簡易な貯留施設構造を検討するとともに、貯留槽への雨水の混入量と蒸発量を明らかにし、貯留施設設計時の指標を検討しました。

2.試験の方法

自家施工が可能なコンクリートパネル、廃サイロなどを利用して、簡易な尿溜やスラリー貯留施設の構造を検討しました。

また、貯留施設における蒸発量を、根釧農試の実規模簡易貯留槽(ラグーン)を用いて実貯留量を計測するとともに、根釧農試アメダスデータの降水量から降雨混入量を推定し、その対比により蒸発量を検討しました。

3.試験の結果

土木工事用コンクリートパネルを用いて、3.5m×3.5m×1.65mの貯留容量20.2m3の簡易貯留槽を製作しました(図1:省略)。パネルの組み合わせによって、貯留量の増加は可能で、ばっ気槽、レセプションピットとして利用できます。

解体された大型気密サイロの壁面パネルを用いて、直径15.6m×深さ2.5m(パネル2段)のスラリーストアを製作しました。水道水をほぼ満水位まで貯留しても、破損や変形はなく実用可能でした。

根釧農試内の簡易被覆ラグ-ンに降った5月~11月の積算降雨量は806.4mmで、貯留量に換算すると504m3となりますが、実測貯留量は404.13m3であることから、蒸発水量は99.87m3と計算され、これは降雨の貯留量の20%でした(表1:省略)。このことから、雨水の混入する糞尿貯留槽は、少なくとも貯留期間の降水量の60%(全道平均)~80%(根釧地域)を貯留容量に加えて設計する必要があります。