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酪農試験場

研究成果:9号の12

根釧農試 研究通信  第9号

1999年3月発行)

研究成果

12.乳牛糞尿の固液分離特性

酪農施設科

1.試験のねらい

牛舎から搬出される糞尿は、堆肥化のためには水分が高く、液状として扱うには水分が低すぎます。糞尿を取り扱い易くするために、固液分離機が導入利用されていますが、糞尿性状によって処理量が大きく変わるなど、利用にあたって不明な点があります。そこで、水分や粘度等による糞尿の分離特性を明らかにし、既存の固液分離機の分離方式別に、処理能力、分離後の固・液分の水分等を検討して、効率的な糞尿の分離法を明らかにしました。

2.試験の方法

糞尿性状別の分離特性について、糞尿水分と粘度、および希釈材料(水道水、曝気液、固液分離液)別に検討しました。また、市販固液分離機の方式別分離特性について検討するとともに、現地導入農家の聞き取り調査により、耐久性と運転状況を検討しました。

3.試験の結果

スラリーの粘度は糞尿の乾物割合によって指数的に変化し、スラリーを水道水で希釈して搾汁した方が、分離後の固形物水分が低く、分離液の回収率も高くなります。

スラリーを水道水あるいは曝気液で希釈した場合、分離後の固形物水分は分離液で希釈したものよりも低くなり、[分離液中の水]と[希釈に用いた水]の比は、水道水希釈では[希釈に用いた水]の2~4.5倍の水が回収され、曝気液でもこれに準ずる量の水が分離液口から回収されました。しかし、固液分離液による希釈では1~2倍の範囲で、分離改善効果はほとんど期待できないことがわかりました(図1:省略)。これらのことから、スラリーを固液分離する場合、水道水や曝気液で、水分91~92%あるいは粘度が2000mPa・s程度になるように希釈すると分離がしやすくなります。

市販機種の方式別分離特性は、スクリュープレス方式の処理能力は7~11t/hで、分離後の固形物水分は70~78%でした。ローラプレス方式の処理能力は10~12t/hで、分離後の固形物水分は75~81%でした。圧縮方式の処理能力は約6t/hで、分離後の固形物水分は約79%でした。バーンクリーナ用分離機の処理能力は約2t/hで、分離後の固形物水分は約85%でした。聞き取り調査では、導入後、2~5年間で、分離用スクリーンを2~5回交換していました。原料を分離液、曝気液で希釈している例が多く、固液分離前の糞尿の原料水分は87.5%~92.8%でした。破損原因の主なものとして、牛舎の新築時に導入した事例で、工事でのコンクリート片等が糞尿中に混入したことが多くみられました。

分離のために洗浄水等で希釈する場合には、分離液の貯留槽容量は十分な大きさとする必要があります。また、固液分離機を牛舎工事等と同時に導入するときは、コンクリート片などの異物除去に留意してください。