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酪農試験場

根釧農試研究通信:9号の14

根釧農試 研究通信  第9号

1999年3月発行)

研究成果

14. 低動力型散気管を用いた乳牛スラリーの曝期処理

酪農施設科

1.試験のねらい

乳牛スラリー散布次の悪臭に対応するため、曝気処理を行っていますが、曝気システムが大型化の傾向にあり、コストを増大させています。低コストに臭気を軽減させるために、曝気動力の小型化・効率化できる散気管方式について検討しました。

2.試験の方法

貯留槽を4区に分割し、各区に散気管、散気装置を配置しました。通気は0.75kWのブロアから配管を4本分岐し、途中に電磁弁を取り付け、各区の散気管、散気装置に送りました。電磁弁を切り替え、それぞれに1時間につき10分間運転(計40分間)し、残りの50分間を休止状態としました。根釧農試総合試験牛舎より、排出された乳牛ふん尿を固液分離した液分を原料とし、半地下のスラリー貯留槽(W8m×L9m×H3m)に、14日間で162mの原料を投入しました。

3.試験の結果

1)曝気中のスラリーの温度は曝気開始1ヶ月後に最高23℃まで上昇しました。このとき貯留槽から泡が溢れました。曝気中の水分は96%前後、ORPは-450mVから-350mV、pHは8.0から8.6に上昇、DOは泡が溢れたあとは0.3mg/L~0.7mg/Lの範囲で安定しいました(図1:省略)。粘度は50mPa・s以下になりましたが、その後は減少し、40mPa・s以下になりました。泡は162mの曝気液に対し、20リットルのオイルを投入して、消泡しました。原料の臭気強度は50000でしたが、曝気2ヶ月で積算通気量が貯留容量の約100倍に達した時点で1000までに減少しました(図1:省略)。このときの体積当たりの積算電力量は3.7kWh/mでエジェクタ方式の1/4になりました。この期間に全窒素量は約8%減少しました。

2)散気管に詰まりが生じ、通気量が小さくなり、通気静圧が大きくなりました。スラリーの粘度、詰まりや配管の圧力損失、供給電力の低下などの影響で、公表性能より曝気能力が低下することが推測されるので、貯留槽の深さの2倍の水中静圧で必要空気量の4割増の能力を有するブロアを選択する必要があります。

◎用語解説

「ORP」:酸化還元電位(-:還元状態、+:酸化状態)

「DO」:溶存酸素量(1リットル中にとけ込んでいる酸素量)

「臭気強度」:曝気液を水で希釈し、40℃に加温、臭気を感じなくなったときの希釈倍率。においが強くなると、値は大きい。