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酪農試験場

根釧農試研究通信:9号の16

根釧農試 研究通信  第9号

1999年3月発行)

研究成果

16.低コスト堆肥化施設の開発

酪農施設科

1.試験のねらい

堆肥の発酵を促進するため、乳牛堆肥かられき汁を除去し、水分を低下させる堆肥舎の床構造を開発しました。

2.試験の方法

1)床構造タイプⅠ「”O”パイプ敷設床」

れき汁排出用の”O”パイプ(図1:省略)を敷設した堆肥盤に、乳牛ふん尿の固液分離固形分を堆積し、”O”パイプからのれき汁排出性を検討しました。この結果をもとに”O”パイプを敷設したパイプハウス堆肥舎の設計を行いました。

2)床構造タイプⅡ

「”O”パイプ+採石+エキスパンドメタル」床箱形発酵槽の床に”O”パイプを敷設し、その上に採石、エキスパンドメタルを重ね、この上に堆肥を堆積したときのれき汁排出能力を検討しました。この結果から、れき汁排出促進型片屋根堆肥舎の設計を行いました。

3.試験の結果

1)床構造タイプⅠ:”O”パイプ敷設れき汁排出促進型床構造の検討

”O”パイプの左右60㎝の範囲で水分移動量が大きいことから、”O”パイプだけで排汁を促進する場合、”O”パイプを1.2mおきに敷設すると、れき汁排出に有効であると考えられました(図2:省略)。

2)床構造タイプⅡ:ビニール被覆パイプハウス堆肥舎の設計(図2:省略)

被覆資材として糸入りビニールを張った耐雪型ビニールハウスを用いました。擁壁にはL型コンクリートパネル(高さ1.8m、長さ2m)を使用し、コンクリート床に”O”パイプを1.2m間隔で5本敷設します。”O”パイプは水勾配を取り、片側の妻面に設置したU字溝に接続し、U字溝からパイプ等で接続し貯留槽へつなげます。この構造では2週間に1度切り返しを行うことにより0.1%/日の割合で水分を低下させることが可能です。れき汁量は低下水分の25%です。施設コストは2万円/㎡で通常の床構造を持った片屋根堆肥舎の1/2になります。

3)床構造タイプⅡ:「”O”パイプ+採石+エキスパンドメタル」床構造のれき汁排出性

堆肥をこの床構造に堆積したとき、64日間で蒸発を含めた水分減少量の約3割がれき汁から排出されました。また、高水分堆肥を堆積したとき、1日のれき汁量は徐々に減少しますが、切り返しをすることで、れき汁量が再度増加したことで、この床構造と切り返しを組み合わせることで短期間に水分を低下させることができました(表1:省略)。

4)

床構造タイプⅡ:れき汁排出促進型片屋根堆肥舎

堆肥舎の擁壁は既製のコンクリートパネル(高さ1.5m、幅1.8m)を使うことにしました。ホイールローダで列状に糞を堆積すると、その幅は5m程度になります。そこで”O”パイプを敷設することにしました。”O”パイプ上にその左右1m幅、高さ15㎝の範囲に採石を敷き詰め、その上に枠付きのエキスパンドメタルを敷く構造です。全てのエキスパンドメタルを接続することで石の飛び出しや切り返し時のエキスパンドメタルのめくれを防ぐことができます。堆積した糞から流れ出たれき汁は採石、”O”パイプを通り、擁壁の外側に埋設してあるU字溝を通り、貯留槽へ流れる構造です。この床構造に堆肥を列状堆積すると2週間に1度切り返しを行うことで10日間で1%の水分を低下させることが可能です。このとき、低下水分の約3割がれき十として排出されます。

以上の結果から、れき汁を系外に流出させず、堆肥の水分を低下させ、発酵を促進させる堆肥舎を開発することができました。