根釧農試研究成果:9号の18
根釧農試 研究通信 第9号
(1999年3月発行)研究成果
18.オランダおよび国内における搾乳ロボット利用実態と導入のための諸条件
酪農第一科、酪農施設科、経営科
1.試験のねらい
近年、ヨーロッパを中心として搾乳作業を無人で行う「搾乳ロボット」が開発され、販売されています。国内においても今後の普及が予想されますが、搾乳ロボットの性能やその導入効果に関しては、国内の導入事例も少なく、不明な点が多いのが現状です。
そのため、搾乳ロボットの導入が進んでいるオランダおよび国内における導入農家の搾乳ロボットの利用実態の調査を行い、国内における搾乳ロボット導入時の問題点や留意点の検討を行いました。
2.試験の方法
1)調査場所
オランダ国内の搾乳ロボット導入農家9戸および研究機関
2ヶ所、国内の搾乳ロボット導入農家5戸および研究機関6ヶ所2)調査項目
搾乳ロボット利用状況、設置場所、搾乳状況、乳量・乳成分、作業時間など
3.試験の結果
①オランダの導入農家および研究機関の調査
1)プロライオン社とリリー社の2社の搾乳ロボットがオランダを中心として実際の酪農家にそれぞれ100台以上導入されています。
2)搾乳ロボットの利用方法は24時間搾乳ロボットを稼働させ、牛の搾乳室への自発的進入によって搾乳を行う自由搾乳を採用しています。
3)搾乳ロボットは既存の牛舎に設置されており、牛舎内を一方通行にするワンウエイカウトラフィックを採用し、搾乳室への自発的進入を促進していました。
4)牛群の1日の平均搾乳回数は3回前後となり、頻回搾乳によって乳量は増加し、乳房炎牛は減少すると述べた農家が多かったです。
5)1日の搾乳時間は1~2時間となり、他の牛群管理作業が柔軟に行えること、自由な時間が増え、生活にゆとりができたと言った意見が多かったです。
②導入のための留意点(表4:省略)
7)搾乳ロボットの不適応牛(搾乳ロボットによる自動ティートカップ装着ができない乳頭・乳房を持つ牛)は牛群の0~10%程度存在するため、導入前に乳頭・乳房形状を測定し、導入前に不適応牛を淘汰する必要があります。
8)搾乳ロボットの設置に関しては、自由搾乳(24時間搾乳)を行う場合は、牛舎内を一方通行(ワンウエイカウトラフィック)にできるような牛舎レイアウトを考慮する必要があります。
9)導入後の最初の1週間程度は搾乳ロボットの搾乳作業を監視し、24時間牛を搾乳ロボットに入れることによって、以前の1日2回の定時搾乳のリズムを自由搾乳のリズムに順応させる必要があります。また、高齢牛や泌乳後期牛は順応が遅いために、馴致は忍耐強く行う必要があります。
10)牛の搾乳室への自発的な進入を促進させるためには、搾乳ロボットでの濃厚飼料給与が必要です。また、頻回搾乳による乳量増加に合わせた、濃厚飼料の種類および給与量の設定、飼槽における給与飼料の変更が必要です。
11)搾乳ロボットを24時間稼働し続けるためには、故障時の販売業者の迅速なサポート体制、酪農家自身の点検やメンテナンス作業、コンピューターの操作が重要となります。
12)乳検は自家検定となり、自動牛乳サンプリング装置が必要となります。
13)搾乳ロボットでは、乳頭洗浄方法も従来の人による搾乳方法と異なるため、乳頭・乳房を汚さない衛生的な牛舎環境が求められます。