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酪農試験場

研究成果:9号の4

根釧農試 研究通信  第9号(1999年3月発行)

研究成果

4.フリーストール牛群の飼養管理と乳牛行動

酪農第一科

1.試験のねらい

フリーストール牛舎は乳牛にとって生活環境であると同時に、生産環境でもあります。乳牛にとって快適な空間を確保し、飼料や休息場所に対する牛同志の闘争を無くすことは、生産性の向上に結びつきます。家畜の行動的反応は、この環境の変化に対する家畜の内面的変化をとらえる唯一の手段であると考えられています。

この試験はフリーストール牛舎における飼養環境と乳牛行動との関係を明らかにすることを目的として行いました。

2.試験の方法

①フリーストール農家における牛群行動調査

24時間、15分ごとに乳牛行動を採食、通路佇立、飲水、牛床起立、反芻に分類し、1頭ずつ牛舎平面図に記帳する方法を用いました。

②フリーストール移行期の乳牛の行動的特徴

初産牛

5頭および経産牛3頭のフリーストール移行後3日間、47日間、2週目,4週目,8週目の3日間の行動を解析しました。

③飼養密度の増加が乳牛行動へ与える影響

初産牛

5頭と2産以上の牛10頭の合計15頭の小群を用いて、1度に利用可能な飼槽数と牛床数を15,10,5頭分に減少させたときの乳牛行動と乳量、飼料摂取量の関係を調査しました。

3.試験の結果

①フリーストール農家における牛群行動調査

11頭当たりの牛床数と1日の平均横臥時間とには関係は見られず、横臥時間は牛床構造や敷き料の影響が大きいと考えられました。

21頭当たりの飼槽幅が70cm以上の農家の2産以上の乳牛の1日の平均採食時間は、70cm以下よりも長いことがわかりました。

31日の反芻頭数は牛群の3540%であり、搾乳前後以外は1日を通じて安定していました。

②フリーストール移行期の乳牛の行動的特徴

4)フリーストール移行時の初産牛の採食時間は2産以上よりも短く、移行後の1回当たりの採食時間の増加も2産以上よりも遅い傾向が見られました。

③飼養密度の増加が乳牛の行動に及ぼす影響

515頭に対して1度に利用可能な飼槽数が5頭分しかない場合、初産牛の1日の採食時間は2産以上よりも短くなりました。また、15頭に対して1度に利用可能な牛床数が5頭分しかない場合、初産牛の1日の牛床の横臥時間は2産以上よりも短くなり、飼槽数や牛床数の減少による影響は初産牛において2産以上よりも大きくなる傾向が見られました。

6)飼槽数の減少により初産牛の乳量がやや低下する傾向が見られたましたが、牛群全体の乾物摂取量への影響はみられず、飼養密度と生産性の関連については今後検討が必要があります。