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酪農試験場

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根釧農試 研究通信  第9号

19993月発行)

研究成果

7. 牛群管理のためのモニタリング

酪農第二科、酪農第一科

1.試験のねらい

フリーストール牛群の生産性および健康を管理するためには、乳牛の個体観察ばかりでなく、牛群全体の栄養・健康状態を効率的に把握することが重要になってきます。

本試験では、泌乳前期の乳牛の栄養充足と乳成分および血液成分の関係、摂取したエネルギーと蛋白質のバランスと乳中尿素窒素(MUN)の関係、栄養充足と蹄輪の関係から、牛群管理のためのモニター指標について検討しました。

2.試験の方法

1)乳成分および血液成分による泌乳前期の栄養充足モニタリング

156頭の個体成績を用いて、分娩後2~4週のTDN充足状況から3区分し、泌乳前期の乳成分と栄養充足との関係について検討しました。また、63頭の個体成績を用いて、血中尿素窒素(BUN)等の血液成分と栄養充足の関係について検討しました。

2)乳中尿素窒素(MUN)による栄養バランス評価法

牧草サイレージ主体の飼養試験を実施し、TDN/CPとMUNの関係について検討しました。

3)蹄輪による栄養充足モニタリング

根釧農試で飼養されている乳牛の左後肢外蹄の写真を撮り、写真から蹄輪の幅に基づいてスコア

0(蹄輪がない)、スコア1(蹄輪の幅1mm未満)、スコア2(幅12mm未満)、スコア3(幅25mm未満)、スコア4(幅5mm以上)に5段階に分けて評価し、分娩後の24週の栄養充足率、過去の疾病との関連を調査しました。

3.試験の結果

1)乳成分および血液成分による泌乳前期の栄養充足モニタリング

泌乳初期にTDN充足率が低かった区(L区)の乳蛋白質率/乳脂肪率比(PRO/FAT)は、分娩後10週まで他の区より低い傾向をしめしました(図1

泌乳前期における乳蛋白質率/乳脂肪率比の推移:省略)。このように、エネルギー充足の指標としてPRO/FATは、有効性な指標であることが示唆されました。

血液成分では、血中尿素窒素(BUN)が、TDN/CPと全ての週で有意な相関を示し、BUNはエネルギーと蛋白質のバランスの指標であることが示されました(表1 BUNと栄養充足およびTDN/CPとの関係:省略)、また、分娩後の推移では、分娩後2週から16週の間において、11.1±3.38mg/dl~12.4±3.46mg/dlの範囲で推移しました。

2)乳中尿素窒素(MUN)による栄養バランス評価法

TDN/CPとMUNとの関係は、個体乳ではばらつきが大きいですが、6頭の平均値を用いると強い相関があることが示されました(図2 TDN/CPに対するMUNの関係:省略)。このように、MUNによる栄養バランス評価は、複数頭のサンプリングした値から判断する必要があります(図2 TDN/CPに対するMUNの関係:省略)。

6頭の平均値を用いた回帰式を飼養標準の推奨栄養含量から算出したTDN/CP(4.16~4.93)に当てはめると、MUNは9.2~12.5mg/dlと推定されました。この範囲は、MUNを用いた乳牛の栄養バランス評価の目安になると考えらます。

3)蹄輪による栄養充足モニタリング

蹄輪スコアが

3以上の場合、分娩後24週のTDN充足率は87.2%であり、蹄輪スコア01TDN充足率(96.6%)よりも有意に低い傾向がみられました(表2蹄輪と分娩後2~4週のTDN充足率およびCP充足率との関係:省略)。また、スコア3以上の蹄輪およびスコア2以下の連続した蹄輪を持つ牛の92%は、過去に何らかの疾病に罹患していていました。

このように、乳牛の蹄輪は、乳牛の栄養充足や疾病と深い関係があり、モニター指標となることが明らかになりました。