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酪農試験場

根釧農業試験場 研究通信10号 研究成果2

根釧農試 研究通信  第10号(2000年3月発行)

研究成果

2. 早期受胎を目指した乳用牛育成前期の飼養法

酪農第一科

1. ねらい

初産牛の割合は増加し、現在では全泌乳牛の3割を占めるまでに高まっています。そのため、初産牛に関するいろいろな問題が表面化してきました。その中の一つは初産分娩月齢です。初産分娩は24か月齢が推奨されていますが、現状では2~3か月遅れており 10年間以上も短縮されていません。初産分娩月齢は、育成期のいつに受胎したかで決まります。受胎時期を早めるには、育成前期に増体量を高めることが最も有効な方法ですが、かつては、育成前期の高増体は乳腺発達を阻害しその後の乳生産を低下させるため、好ましいことではないとされてきました。最近では、育成期の高増体は過肥にすることが問題であり、エネルギ-とタンパク質のバランスとれた飼料給与で体格が大きくなれば問題ないと言われています。しかし、この根拠は外国のデ-タ由来のものであり、北海道のサイレ-ジ主体とした飼養体系で増体量を高めたときの基礎的デ-タ(飼料中粗濃比割合、養分含量、乾物摂取量など)がなく、また発育に及ぼす影響も明らかにされていませんでした。

そこで、本課題では、粗飼料主体として増体量を高めたときの月齢ごとの摂取量、飼料中養分含量と発育の関係について検討しました。

2. 試験方法

1)育成牛用飼料のタンパク質含量の検討

乳用育成雌牛10頭を、飼料中のタンパク質含量 20%(3~6ヶ月齢)および16%(7ヶ月~受胎まで)とする高タンパク質区(以下、高CP区)と、同様に16%および12%とする標準区に分けて、3ヵ月齢から受胎まで飼養しました。粗飼料として、牧草サイレ-ジとトウモロコシサイレージを乾物比で1:1の割合で用い、給与飼料のTDN含量は両処理とも等しく72%としました。

2)育成牛用飼料のタンパク質源の検討

育成牛22頭を用いて、育成用飼料に用いるタンパク質源として大豆粕と魚粉を比較しました(それぞれ、大豆粕区、魚粉区)。魚粉の添加量は乾物で 6%としました。また、飼料中のタンパク質含量およびTDN含量は全期間をとおして乾物中16%および72%としました。試験は、とうもろこしサイレージを用いた試験では3ヶ月齢から受胎まで、粗飼料として牧草サイレ-ジのみを用いた試験では4ヶ月から6ヶ月齢まで実施しました。

3. 試験結果

1)サイレージ主体飼料(乾物中NDF含量は約40%)給与時の育成牛の月齢別乾物摂取量が明らかになりました(表1:省略)。

飼料乾物中のタンパク質含量によって摂取量に差は見られませんでした。乾物摂取量は概ね体重の2~3%で、NRC飼養標準(1989)に示された値よりも低い値でしたが、日本飼養標準(1999)の値とほぼ一致しました。

2)飼料乾物中のTDN含量を72%にすることで0.96~0.99㎏の日増体量が得られました。その結果、飼料乾物中のタンパク質含量およびタンパク質源の違いに関係なく、12~13ヶ月齢には交配可能な基準体格(体重350㎏かつ体高125㎝以上)に達しました。また、15か月齢までに受胎しました(表2:省略)。

3)血中尿素態窒素濃度から判断して、乾物飼料中のタンパク質含量が20%と高い場合ではタンパク質が無駄となる傾向がみられ、一方、12%では第一胃内発酵の効率が低下する傾向がみられました(図1:省略)。また、7ヵ月齢以降に飼料乾物中のタンパク質含量を12%から16%に高めることにより、体高が大きくなる傾向が認められました(図2:省略)。これらのことから、育成牛飼料のタンパク質含量は乾物中16%が適当と考えられました(図1:省略)。

5)粗飼料構成の違いに関わらず、魚粉区と大豆粕区で発育等に差はみられませんでした。そのため、育成牛飼料に魚粉を添加する必要はないと考えられました(表1,2,3:省略)。