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酪農試験場

根釧農業試験場 研究通信10号 研究成果3

根釧農試 研究通信  第10号(2000年3月発行)

研究成果

3. 高水分乳牛糞尿に対するシート被覆の効果

酪農施設科・土壌肥料科

1.試験のねらい

糞尿の有効利用と環境保全のため、堆肥盤、堆肥舎およびれき汁貯留槽等の施設が奨励されていますが、建設・施工費が高額となり経営面での酪農家の大きな負担になっています、しかし、現実には実際の飼養規模に見合った施設規模が確保されていない場合が多くみられます。また、「家畜排せつ物の管理の適正化および利用の促進に関する法律」が施行されましたが、野積みの禁止、堆肥盤への屋根の設置など、乳牛糞尿処理のコスト増が避けられない状況となっています。そこで低コストな堆肥化支援技術として高水分乳牛糞尿を原料とした堆肥列に通気性シートおよび防水シート(一般名:ブルーシート)で被覆して、その被覆効果をシートの種類とシートの有無の条件別に検討しました。

2.試験の方法

水分78~82%の敷料混入乳牛糞尿を用いた堆肥列に通気性シートおよび防水シートを被覆してシートの種類による違いおよびシートの有無による違いの条件で比較検討しました。測定項目は、堆肥列温度、重量、体積、水分および肥料成分含有率とれき汁量およびれき汁中の肥料成分含有量です。

3.試験の結果

1) シートの種類による違い

堆肥列に通気性シートと防水シートを被覆した結果、重量および体積減少率、堆肥中の水分および肥料成分含有率のいずれについても被覆資材の違いによる大きな差はありませんでした

2) シート被覆の有無による違い

① シート被覆をした堆肥列の重量減少率は無被覆に比べ高く、堆肥列の温度は無被覆に比べ高くかつ安定して推移しました。これはシート被覆で堆肥列への雨水浸入が抑制されたことにより、温度の上昇と有機物の分解が促進されたと考えられます。体積減少率はシートの有無による差はわずかでしたが、重量減少率が高いことから堆肥列の発酵が良好に進むための指標である「かさ密度」はシートを被覆することにより低く維持されたと考えられます。

② 試験終了時の堆肥列中の水分含有率に大きな差はなく、窒素の減少率でも差は認められませんでした。しかし、リンおよびカリウムではシート被覆により含有率が高く維持され、肥料成分の損失も抑制されました。

3) れき汁

堆肥列をシート被覆することにより雨水の侵入が抑制されたため、れき汁発生量は無被覆の22~33%に抑制されるとともに、れき汁と共に排出された肥料成分のうち、特にカリウムは無被覆の26~43%に抑制されました。

4) まとめ

以上の結果より、高水分乳牛糞尿の堆肥列をシートで被覆することにより①堆肥列への雨水の浸入を防止する効果、②堆肥列の温度を上昇させ安定させる効果、③堆肥列重量を減少させる効果、④肥料成分の流亡を抑制する効果、⑤降雨によるれき汁量の増加を抑制する効果が期待できます。