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酪農試験場

根釧農業試験場 研究通信10号 研究成果4

根釧農試 研究通信  第10号(2000年3月発行)

研究成果

4. 乳牛の供用年数短縮の要因解析

酪農第一科・経営科

1.研究のねらい

近年の酪農経営規模の拡大及び高泌乳化に伴い、乳牛の供用年数の短縮や死廃・病傷事故の増加し、乳牛償却費や治療コストが増大しているといわれる。そこで、経営規模、乳量水準および飼養形態と、平均産次および死廃・病傷事故との関連を明らかにする。

2.試験の方法

1)供用年数変動の状況と課題

アンケート調査及び部分試算計画法による乳牛淘汰の経済性の検討。

2)全道における供用年数と飼養管理及び除籍淘汰・死廃理由との関連解明

乳検及び共済加入農家1572戸を抽出し検討。

3)根室・十勝管内における乳量水準・飼養形態と死廃・病傷事故との関連解明

根室217戸、十勝98戸の乳検及び共済加入農家を乳量水準及び飼養形態別に比較検討。

4)精査農家における供用年数の調査

平均産次2.5産以下(短群)及び3.5産以上(長群)の農家計26戸を比較検討。

3.試験の結果

1-1)供用年数の延長は、収益性や作業効率向上を目的とした淘汰基準の強化及び病傷による不慮の淘汰の増大のもとで強く制約されている。

1-2)平均産次数は多くの要因に規定され、収益性との関係は個別性が強い。また、平均産次の差異は直ちに経営間の収益性の違いを表さない。

1-3)酪農経営は家畜共済金の受給により不慮の淘汰による不利益を直接被らない。しかし、不慮の淘汰は当該牛の牛乳生産の断念や代替牛の個体販売機会の喪失等による収益獲得機会の逸失を引き起こす。経産牛50頭以上を飼養する7経営の試算では、その所得逸失額は平均年間150万円に達する(表1:省略)。

2-1)平均産次数は経産牛頭数や乳量水準が高いほど短く、畑作型地域で短い傾向にある。また、繋ぎ(ST)飼養に比べ、フリーストール(FS)飼養が短かった(表2:省略)。

2-2)除籍割合は草地型地域が低く、FS飼養では運動器、消化器、死亡による除籍が多く、ST飼養では乳房炎、乳器障害、繁殖障害、乳用売却による除籍が多かった(表2:省略)。

3-1)全病傷事故危険率は乳量水準では高泌乳群が高く、飼養形態ではST飼養が高かった。高泌乳群では乳房炎、第四胃変位、胃腸疾患およびケトーシスが高かった。また、ST飼養では乳房炎、乳頭損傷および卵巣疾患が高く、FS飼養では第四胃変位および乳熱が高かった(表3:省略)。

3-2)平均産次は経産牛乳量と負の相関があったが、死廃および病傷事故危険率との相関はみられず、平均産次の低下は死廃・病傷事故の増加と直接的には結び付かない。

4-1)長群では共済淘汰が72%と多く、自家淘汰が少なかった。短群・長群とも除籍牛の8~9割は病傷事故に関係していたが、実際の淘汰では飼養頭数、育種改良、個体販売、共済費などが考慮されていた。

4-2)飼養技術は農家間の差が大きく、平均産次および病傷事故との関連を明らかでなかった。

4-3)ボディコンディションスコアーでは乳期別平均値2.8以下および許容範囲外割合25%以上、乳成分では分娩後50日以内の乳蛋白質率2.8%以下、乳脂肪率5.0%以上およびPRO/FAT比0.7以下の割合が、繁殖性低下や妊娠分娩期疾患との関連がみられた(表4:省略)。