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酪農試験場

これまでの主な研究成果(平成20~30年度)


○ 超音波画像診断による半硬質チーズ内部構造の評価(平成20年度・研究参考事項)

 チーズ熟成過程における品質の良否判定を早期に実施するため、超音波画像診断装置を用いたチーズ内部構造の非破壊的評価方法の有効性を検討しました。超音波画像診断装置を用いることで、チーズ内部のガスホール、クラック等を非破壊的に観察できること、また、熟成中チーズの内部構造の経時的な評価ができることを示しました。

○ 放牧による泌乳牛の糖代謝能の向上および肢蹄の健康の改善(平成20年度・指導参考事項)

 放牧飼養が泌乳牛の糖代謝能と肢蹄に及ぼす影響について検討しました。その結果、泌乳牛の放牧を継続することで、糖代謝能が向上すること、また、肢蹄の健康状態が改善されることを示しました。

○ 小型バッチ式初乳加熱装置の殺菌性能と加熱初乳による免疫賦与効果(平成20年度・指導参考事項)

 本装置を用いて初乳を加熱することにより、初乳中の細菌数が減少することを示しました。また、加熱処理により初乳中の免疫グロブリン濃度は軽度に減少する場合が認められましたが、子牛に対する免疫賦与効果は非加熱の初乳と同等であることを示しました。

○ 乳牛の産褥期における発熱と乳量・飼料摂取量および疾病発生との関係(平成20年度・指導参考事項)

 乳牛では産褥期に疾病が多発し、多大な経済的損失を招いています。乳牛の健康状態を監視する有効な手法の一つとして体温測定があり、近年、産褥期の定期的な体温測定が推奨されています。本課題では産褥期の乳牛において発熱状況と健康状態の関係および飼養成績に与える影響について調査し、定期的な体温測定の有用性を実証しました。

○ しょうゆ油の飼料特性と泌乳牛への給与水準(平成20年度・指導参考事項)

 しょうゆ油は丸大豆しょうゆの醸造過程において生産される油脂ですが、醸造過程で微生物による分解などを受けるため、大豆油とは油脂としての組成が大き く異なります(大豆油はトリグリセライド主体、しょうゆ油は脂肪酸エチルエステル主体)。また、しょうゆ独特の香気と褐色の色合いを有することや、一般的 な食用油脂と比較して粘性が低いことも特徴です。本成果では、しょうゆ油の泌乳牛用飼料としての特性と給与水準について示しました。

○ カーフハッチにおける乳用子牛の4週齢離乳法(平成20年度・指導参考事項)

 乳牛では産褥期に疾病が多発し、多大な経済的損失を招いています。乳牛の健康状態を監視する有効な手法の一つとして体温測定があり、近年、産褥期の定期的な体温測定が推奨されています。本課題では産褥期の乳牛において発熱状況と健康状態の関係および飼養成績に与える影響について調査し、定期的な体温測定の有用性を実証しました。

○ 牛血中ハプトグロビン測定法の迅速化(平成21年度・研究参考事項)

 ハプトグロビンは子宮炎、乳房炎、蹄病および呼吸器病などで上昇し、炎症性疾患の診断あるいは治療方針の決定などの際に利用可能と考えられます。そこでハプトグロビン測定のを迅速化について検討を行いました。その結果、従来法に比べて測定時間を大幅に短縮(75分間→22分間)することができました。

○ 乳頭清拭装置の作業性と清拭効果(補遺)(平成22年度・指導参考事項)
   (パンフレット)

 新たに開発された乳頭清拭装置の清拭効果を根釧農試場内で試験を実施し「乳頭清拭装置の作業性と清拭効果(平成20年度・指導参考事項)」を示した。その後、パーラー搾乳を行っている一般酪農場における清拭効果、バルク乳の衛生的乳質、乳房炎発生率および搾乳準備作業時間についても調査を実施しました。その結果、乳頭清拭装置による清拭効果および衛生的乳質に及ぼす効果はタオル清拭と同等あるいはそれ以上であることが示されました。また、パーラーにおける作業性についても、推奨時間内でミルカーの装着が可能であることを示しました。

○ 乾乳期間の短縮が泌乳前期の産乳及び繁殖に与える影響(平成22年度・指導参考事項)
  (パンフレット)

 乳牛においては分娩後の急激な乳量の増加により栄養状態が悪化し、周産期病が多発します。近年、乾乳期間を従来の60日から短縮することで分娩後の急激な乳量の増加を低く抑えられる可能性が示されつつあります。本課題では乾乳期間を60日から30日に短縮することにより、2産ではピーク乳量が低くなるが、分娩後の栄養状態と繁殖成績が改善されることを示しました。また、3産以上では乳生産性に影響がなく、繁殖成績が改善されることを示しました。

○ 乳牛における超音波断層法を用いた分娩後の子宮修復の判定基準(平成23年度・指導参考事項) 
  (パンフレット)

 子宮内膜炎は受胎率低下の大きな要因です。子宮内膜炎は、早期に発見し治療することが必要ですが、標準的な診断法は確立されていません。本課題では、分娩後の子宮修復状況を超音波断層法によりスコア化し、判定できることを示しました。分娩後40日目以降に子宮に異常が認められた乳牛については子宮内膜炎を疑い、治療の検討をしたほうがよいことを示しました。

○ 北海道におけるブラウンスイス種の特性(平成23年度・指導参考事項)

 乳蛋白質率が高く放牧や粗飼料利用性に優れるとされるブラウンスイス種の導入により地域ブランド化が期待されています。しかし、発育、産乳能力や粗飼料利用性、特に放牧適性を示した情報は非常に限られています。本課題ではホルスタイン種と比較することで、ブラウンスイス種の、発育特性、乳生産性、飼料消化特性、放牧行動などについて検討しました。

○ 小規模チーズ工房における原料乳の酪酸菌制御法とそれを用いた中温熟成法(平成23年度・指導参考事項)
(パンフレット)

 チーズの熟成温度を低温域(9℃以下)から中温域(12-16℃)へ高めることは、風味の良いチーズを作る手段として有効ですが、原料乳中に酪酸菌が多い場合には、中温熟成中に酪酸発酵が生じ、異常風味や膨張の原因となります。このため酪酸菌数の少ない原料乳が必要となります。そこで本課題では、小規模工房でも測定可能な原料乳中の酪酸菌測定方法を提示するとともに、酪酸菌の制御法とそれを用いた中温熟成法について示しました。

○ 牧草収量が少ないのはシバムギのせいかもしれません(平成26年度)

 近年、牧草地の植生が悪化していますが草地整備事業予算の減少により、草地更新率は低下しています。今後は酪農家が自ら植生改善する意欲を持てるよう現在もっとも問題になっている地下茎イネ科雑草であるシバムギの飼料特性や産乳性を優良草種であるチモシーと比較して、草地更新の経済効果の算出を試みました。

○ 乳牛におけるとうもろこしエタノール蒸留残渣(DDGS)の飼料特性、産乳性(平成26年度)

 DDGSは燃料アルコール製造時の副産物であり、デンプン以外の成分が濃縮されることからタンパク質源、エネルギー源としての利用が期待されています。近年DDGSは乳牛用飼料として利用されていますが、牧草サイレージ主体飼養条件下におけるDDGS給与に関する情報はほとんどありません。本課題では、DDGSの飼料特性と産乳性を明らかにしました。

○ 子宮内膜炎の予防が乳牛の繁殖成績を上げる近道(平成26年度)

 子宮内膜炎は乳牛の繁殖性を低下させる主要因の1つとされていますが、農場における発生実態や発生要因については調査が進んでいません。また、効果的な治療法が確立されていないため、その予防が重要です。本課題では、酪農場における子宮内膜炎の発生実態および発生要因を明らかにし、その予防指針を作成しました。

○ もっと牧草サイレージを食べさせよう:繊維消化速度を考慮した飼料設計(平成26年度)

 泌乳牛の飼料設計において、イネ科主体牧草サイレージ給与量を制限するもっとも大きな飼料側の要因は、繊維(NDF)の「量」と「質」です。NDF含量が同じでも、質の良いNDFは消化速度が高く、第一胃の膨満度が速やかに低下し、NDF摂取可能量が高まります。本課題では、イネ科牧草主体サイレージのNDF消化速度と泌乳牛の乾物およびNDF摂取量の関係とNDF消化速度の簡易推定法について示しました。

○ 牧草サイレージのTDN推定式の改良(平成27年度)

 飼料中の可消化エネルギーを示す可消化養分総量(TDN)は、飼料設計をするうえで重要な項目のひとつです。道内の飼料分析センターでは、イネ科牧草サイレージ用として米国のNRC飼料標準(2001)の推定式(以下、現行式)を使ってTDNを算出しています。しかし、現行式で算出したTDN推定値は、TDNの中高領域(60%)以上において、消化試験で算出された実測値より低く推定されるという問題があります。本課題では、牧草サイレージのTDNを正確に算出できるように推定式を改良しました。

○ 性選別精液を若雌牛に種付けするタイミング(平成28年度)

 性選別精液による人工授精実施が近年増えています。しかし、性選別精液は妊娠しづらいことが課題でした。本課題では妊娠しやすくなる人工授精のタイミングを明らかにしました。

○ 公共牧場での乳用後継牛の春の発育不良対策と昼夜放牧開始体重の目安(平成28年度)

 春に乳用後継牛を昼夜放牧すると、放牧開始後1カ月間に体重が減少することが知られています。この発育不良は、気温や飼料の急変、放牧未経験による採食行動の未発達といった原因が重なることにより引き起こされると言われております。本課題では、公共牧場において6カ月齢で昼夜放牧を開始するために必要な春の寒冷対策と、初回授精月齢が遅延しない放牧開始時の体重を検討しました。

○ 乾乳期の乳牛はこうして飼おう!(平成30年度)

  乳牛は分娩直前から分娩1カ月頃までの「周産期」に疾病が発生しやすく、周産期疾病は乳用成雌牛の死廃理由の26%を占めています。周産期疾病発生の主なリスク要因は、乾乳期間の過肥と分娩前後の飼料摂取量の低下ですが、それらのリスクを低減する網羅的な飼養管理方法は整理されていません。本課題では、乳牛の周産期疾病低減を目指し、乾乳期間の適切な飼養管理方法を提示しました。

○ 酪農場のデータを使って健康状態を改善する(平成30年度)

 乳牛では周産期にさまざまな健康上の問題が発生します。周産期における健康上の問題は牛群の乳量や農場の収益を低下させるため、無視することはできません。本課題では、周産期管理を改善するために、酪農場で得られるさまざまなデータを活用した周産期の飼養管理をモニタリングする方法について検討しました。








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