十勝の土壌
十勝の地形
十勝の主な地形は、十勝川とその支流域の低平地(沖積地)、河岸段丘(洪積地あるいは台地)、そして起伏の大きい丘陵地に分けられま す。中でも特に段丘地形が発達しているのが特徴です。これらの地形条件によって異なる母材(土壌の鉱物的な起源物)や水分環境に応じ、多様な特徴を持つ土壌が生成、分布しています。
十勝の典型的な土壌型
火山性土
支笏カルデラ周辺、東大雪、雌阿寒岳等の火山から噴出した火山灰が十勝一円に降り積もり、厚い火山灰層を形成しました。堆積している火山灰は新旧合わせて20種類以上に及び、古くは10万年前のものが見られます。
この火山灰を母材として生成した土壌が火山性土(黒ボク土)です。降灰後に繁茂した植生が枯死分解し、生成した腐植が火山灰と強く結合 し、やがて真っ黒な腐植層が形成されます。腐植層は微生物によって次第に分解され褐色となりますが、集水地形や下層堅密で排水が悪いような条件では分解が進まず、腐植層が厚いまま残されます。カシワ林はこのような所に多いのです。こうして十勝には、褐色と黒色の2種類の火山性土が混在し、「乾性」「湿性」の火山灰と呼び慣わされてきました。土壌分類上は、それぞれ淡色黒ボク土、腐植質黒ボク土とされ、特に排水不良な条件では多湿黒ボク土となっています。
火山性土は、リン酸を吸着固定しやすい性質があり、また養分が少なく風害も生じやすい特徴があります。
火山性土以外の台地、低地の土
降灰の少なかった十勝東北部の台地・丘陵地では、堅くてやや重粘な褐色森林土や灰色台地土が見られます。このような土壌地帯では、排水対策など物理的な改善対策が必要とされています。
一方、低地に堆積した火山灰は、水で流されたり氾濫で新たな土砂が堆積するため、火山灰の特徴が失われます。そして、川が運んできた粘 土や砂を母材にした土壌が生成します。これは、排水の善し悪しで褐色低地土、灰色低地土、グライ土に区分されています。十勝の低地土の特徴として、石礫の多いことが挙げられます。
十勝川下流域の低湿地帯では、繁茂したヨシやハンノキなどが分解せず堆積し、泥炭層が形成しました。こうした地帯でも排水改良が進められ、泥炭土として農地利用されていますが、地下水位が高まりやすいのが問題点です。
現在の土壌の姿とこれから
このように多様で問題点を抱えた十勝の土壌ですが、開拓以来、百数十年に及ぶ先人の努力によって肥沃度の向上が図られてきました。同時に排水改良や火山灰層の反転、混合や客土、除礫と行った土層改良も大規模に進められ、生産力向上の大きな原動力となりました。
一方、近年の問題として、土壌病害回避のため土壌が酸性化する傾向にあること、営農の機械化進展に伴う作土直下の耕盤層形成、防風林の 減少に伴う春の風害、傾斜地での土壌流亡等が挙げられます。また地域的には、家畜ふん尿等の局所的過剰施用や野菜作の増加に伴う過剰施肥による養分蓄積も指摘されます。しかし、生産者のコスト・環境意識の向上、土壌診断の普及、関係機関の努力等によって、施肥管理や土壌管理の適正化が進められており、次代の農業生産を支える基盤として土壌機能を増進させる努力が続けられています。
大まかな区分 | 土壌分類 | 面積(ha) | 割合(%) |
---|---|---|---|
火山性土 (黒ボク土) | 黒ボク土 | 82,658 | 32.2 |
多湿黒ボク土 (黒ぼくグライ土を含む) | 43,824 | 17.1 | |
台地土 (洪積土) | 褐色森林土 | 19,805 | 7.7 |
灰色台地土 (グライ台地土を含む) | 14,038 | 5.5 | |
低地土 (沖積土) | 褐色低地土 | 61,411 | 23.9 |
灰色低地土 (グライ低地土を含む) | 25,035 | 9.7 | |
泥炭土 | 泥炭土 | 10,202 | 4.0 |
合計 | — | 257,000 | 100.0 |
出典:橋本・志賀、北海道土壌区一覧、北海道立農業試験場報告.21、道立中央農試(1993)