水産研究本部

試験研究は今 No.108「 チロン・サハリン支所から初の研修生来る!」(1992年6月19日)

トピックス チンロ・サハリン支所から初の研修生来る!

  北海道立水産試験場とチンロ・サハリン支所(太平洋海洋漁業研究所)との研究交流が、平成2年度から年1回ずつ相互訪問することで行われています。その交流の中からチンロ・サハリン支所の研修員を受け入れてほしいという要望が出され、OFCF(海外漁業協力財団)協力のもとで初めて実現しました。今回、2名の研修員が5月25日から1ヶ月間、それぞれ網走水産試験場と鹿部町の栽培漁業総合センターで、ホタテガイの培養殖技術とヒラメの人工採苗技術を勉強しています。

  網走水産試験場でホタテガイの増殖技術の研修をしているヴィクトルアレクサンドロヴィッチ セルゲインコ(27歳)さんにサハリンで現在行っている調査・研究や日本でのほたてがい漁業の研修体験についてお話をしていただいたので、簡単に紹介します。

  「私は、無脊椎動物・海藻部に所属し、亜庭湾に面しているブッセ湖(旧日本名:遠淵湖)で主に底棲生物や環境の調査をしている。ブッセ湖は、最大幅12キロメートル、最大水深約6メートルでカキ、ナマコ、アサリが生息し、時にナマコの生息密度が高く、海藻はイタニグサが多く分布している。戦前、亜庭湾にホタテガイが生息していたが、漁獲されつくし今はいない。
    • 図
    • 浮遊幼生の採集
    • 浮遊幼生の分離
  ブッセ湖でホタテガイの浮遊幼生(?)がみられるので、北海道でホタテガイの生活史、垂下養殖、地まき増殖技術を習得したい。」と今回の研修目的などを語っています。

  5~6月は、ほたてがい漁業の一連の工程中で最も多種多様の経験ができる時期です。網走に着いた翌々日から、海洋観測、浮遊幼生の採集、採苗器の投入、種苗の出荷、種苗放流など朝早くから網走漁業協同組合や西網走漁業協同組合の調査船や操業船にお世話になって数回乗船し、漁業の実態を肌で体験しています。

  「これらの体験から、採苗器の投入や種苗放流には非常に多くの漁業者や漁船が一致団結して共同作業に従事している様子、漁場の利用法や種苗生産・中間育成、放流の技術水準の高さにとても感銘しました。」

  このような研究員交流によって両国の漁業や研究が一層進展するようにお互いに勉強しているところです。
(網走水試増殖部)

-中央水産試験場庁舎改築工事始まる-

  中央水産試験場は、前身を北海道水産試験場と言い、明治34年(1901年)に設置され、1世紀に近い年月を北海道の水産業の発展と共に歩んで来ました。現在の余市庁舎は、昭和6年(1931年)に完成し、当時東洋一の研究所と言われ60年以上にわたり近隣の皆さんにも親しまれてぎましたが、老朽化が激しくなったため、平成4年から7年まで4年間かけて新しい庁舎を建設することになりました。

  本年度は、現庁舎の付属施設解体と新しい管理研究棟の躯体工事及び取水工事の一部が行われる予定です。

  6月15日、曇天の中、付属施設の解体工事が始まりました。

  大型のバックホウが最大の付属施設である木造2階造りの加工実験施設(加工場)に取り付くと、壁やトタン屋根を次々と取り壊して行きました。それはプリンをスプーンですくい取るように、易々と進められ、冷凍すり身の開発など数多くの輝かしい研究成果を産み出す舞台となった加工場は、わずか1時間足らずで完全に姿を消しました。

  この日は午前中に加工場の外、漁具保管庫なども解体されました。全ての付属施設の解体作業が数日中に終り、解体材の搬出、整地の後7月にはいよいよ新しい管理研究棟の抗工事に取り掛かります。
(中央水試 企画情報室)
    • 解体される加工場