水産研究本部

試験研究は今 No.111「ホタテガイ採苗に関わる調査と留萌南部地区における採苗指導の取り組み」(1992年7月10日)

ホタテガイ採苗に関わる調査と留萌南部地区における採苗指導の取り組み

  現在のホタテガイの生産は種苗の確保が必須条件であり、前提となっています。留萌南部地区をおげるホタテガイ漁業は小平と増毛で養殖生産が行われており、また放流用種苗の生産販売地区としても重要な役割を担っている地域です。

  採苗は「いつ、どのくらい」採苗器を投入するかの判断が重要で、そのための情報が必要となってきます。ホタテガイ生産地域の各機関では種々の調査を行い、「採苗速報」として情報提供しています。

1:生殖巣熟度調査

  母貝の成熟度の推移から産卵期を推定します。当地区で臼谷(小平)の3年貝(満2才)と増毛の2年貝(満1才)、ともに養殖育成貝を対象にほぼ1週間毎に調査を行っています。ここ数年の産卵期は4月中旬(10日~20日)頃となっています。

2:浮遊幼生調査

  ホタテガイは受精後30~40日間ほど浮遊生活をおくり、大きさが260~300ミクロン」に成長すると、何かに付着する性質を特っています。採苗はこの性質を利用し、採苗器(網の袋)を海中施設に垂下して稚貝を採取します。したがって浮遊幼生(ラーバ)がいつその大きさに達するかを予測するために、成長の推移を調べることが重要となります。

  当地区では臼谷沖の水深50メートルと40メートルの2ヶ所で調査を行っています。プランクトンネットを水深30メートルから鉛直に曳いてブランクトンを採取し、その中からホタテガイの浮遊幼生の数と個々の大きさを万能投影機を用いて計測し、統計処理をします。これをほぼ1週間間隔で行い、浮遊幼生の成長を追跡しています。

  ほぼ1週間に1度の間隔で実施し、浮遊幼生の成長を追跡しています。

3:付着稚貝調査

  採苗器は内袋と外袋の二重の構造で、内袋はネトロン網地を使用し、外袋にはネトロン網地または玉ねぎ袋を使用しています。漁業者が付着稚貝をとりあげてザブトン籠に移し替える作業は例年9月上旬頃ですが、その間、付着状況を確認する調査を行っています。

  調査は、外袋がネトロンと玉ねぎ袋の2種類の採苗器を定期的に回収し、付着した稚貝の数と大きさ、イガイや食害を受けるヒトデの付着などについても個数を数え、採苗の良否を判断します。

4:採苗指導

  ホタテガイ漁業を営む漁業者にとって採苗の良否は、文字どおり”メシのタネ”であり、最大の関心事と言えるでしょう。

  留萌南部地区では小平町(臼谷および鬼鹿)に25軒、増毛町に14軒の漁家がホタテガイ養殖を営み、うち38軒が採苗および種苗生産を行っています。

  当指導所では、これら採苗関連調査の結果を「ホタテ速報」として取りまとめています。この「ホタテ速報」は、年輩の方にも読み易いようにワープロの4倍角を使った大きな文字で文章を書き、また「より詳しい情報を」という希望に応えるよう図表を折り込み、B4用紙で2~3枚程度のものを作成しています。この速報は作業小屋などを巡回し、漁家1軒1軒に説明しながら配布していきます。(稚内水試 水産業専門技術員)

ホタテ速報-8 ホタテガイの浮遊幼生出現状況及び付着確認調査

  平成4年5月22日    
  留萌南部地区水産技術普及指導所
  臼谷地区で5月20日に第6回目の浮遊幼生調査と付着状況確認調査を行いましたので、結果をお知らせします。

  1.浮遊幼生の出現状況
  出現個数はネット1曳当たり(30メートル鉛直曳き)で62個、1平米当たりでは29.2 個を確認しました。これは昨年、一昨年の同時期と比較すると、約3倍の出現数となっています。

  大きさは140ミクロン~320ミクロンの範囲に見られました。

  200ミクロン以上の大型幼生はネット1曳当たり39個(約4割)で、平成2年以降最も多く出現しており、さらに260ミクロン以上の付着間近の幼生はネット1曳当たり12個(全体の約1割)見られました。

  ヒトデについては、付着期に至らない浮遊期後期の幼生がネット1曳当たり2個みられました。
    • 浮遊幼生出現状況 過去との比較表