水産研究本部

試験研究は今 No.113「最近コンブ漁場に雑海藻が増えていますが、その駆除方法について教えて下さい。」(1992年7月31日)

Q&A? 最近コンブ漁場に雑海藻が増えていますが、その駆除方法について教えて下さい。

  現在、北海道のコンブ漁場で行われている雑海藻駆除技術は、図のように整理できます。海底条件・気象条件・雑海藻の種類などがそれぞれの漁場で異なっていますので、どの漁場にも万能という方法は今のところありません。雑海藻駆除を行おうとしている場所の条件を十分考慮して、最も適した技術を既存のものから選択するか、新たに技術開発していかなげればなりません。図に示しました雑海藻駆除技術の個々の特徴については紙面の関係から説明を省略しますが、雑海藻駆除技術を検討するにあたっては、その技術の駆除単価、作拳効率、雑海藻除去率の三点を考えておく必要があります。
    • 図
  第一の駆除単価とは、漁場1平米あたりの雑海藻を駆除するのに要する経費のことで、これは投資効率を高めるためできるだげ安く抑えることが必要です。第二の作業効率とは、1日(1週・1か月)あたりの雑海藻駆除面積のことです。たとえ1日あたりの作業効率が非常に高くても、少し時化ると作業が困難になる技術もありますので、週または月を通じて作業効率の高い技術が望まれます。しかしチェーン振りという技術(FRPP製のフロートの両端にチェーンを垂下)の場合には、時化の時の方が作業効率が高く、ほかの技術とは逆になります。この技術は日本海に面する利尻島で生まれ、冬の北西の風による時化(波のエネルギー)を効率的に利用しています。ただ道東では冬期間は比較的なぎのところが多く、波の波長も長い場合が多いので、その実施にあたっては気象条件を十分考慮し、効率的に稼働するよう設置場所や施設構造の検討が必要です。第三の雑海藻除去率とは、着生している海藻をどの程度はがすことができるかということです。この場合大型の海藻に対しても無節サンゴモ類のような殻状の海藻に対しても除去率の高いことが望まれます。また多年生の海藻の場合、除去部位によっては再生することもありますので、できる限り付着部からはがせる技術が望まれます。

  雑海藻駆除の実施時期については二つの場合が考えられます。一つは雑海藻駆除を行うことにようて直接コンブ群落が形成されることを主目的とする場合で、その適期は9月から3月までと考えています。9~12月にはコンブの遊走子の着生、1~3月とは下草となっていたコンブの配偶体の成長によって群落形成が期待できるからです。もう一つは雑海藻自体を減少させることと、その繁殖力を減少させることを主目的とする場合です。これには対象とする雑海藻種毎に最も効果の上がる時期、あるいは最も駆除効率の良い時期を選ぶことが大切です。例えばホンダワラ類(道東では主にウガノモクとネブトモク、漁業者は一般に立ち藻と呼ぶ)は7~8月に成熟して多くの幼体を放出します。したがってこの成熟期前に刈り取ることによって次代の群落形成を阻止する効果と、海水流動を大きくしてコンブの身入りを良くする効果が期待できます。一方駆除のしやすさからすると、ホンダワラ類は9月以降上部が流出し、根(付着部)と茎部だけになりますのでこの時の方が効率的です。上のように駆除時期を検討するためにはコンブ類や雑海藻類が1年を通じでどのような生活を送っているのか良く知っておく必要があります。

  現在、雑海藻駆除の事業主体はほとんどの場合が漁業協同組合で、その予算確保と実施体制の状況は様々です。その雑海藻駆除に要する事業費は、今までは漁協単独か道や市町村の補助金による場合が多かったのですが、最近は漁集者に雑海藻駆除の負担金を課す漁協も多くなってきています。大がかりで多くの経費を必要とする場合の雑海藻駆除は、'図のように専門業者が行っているのが一般的です。しかしネジリや鎌を使南してスガモやホンダワラを駆除したり、干潮時に金べらを使用した磯掃除を行うなど、漁業者の着業義務としての雑海藻駆降を今後は重視していく必要があります。そして不足部分を専門業者が補う体制が理想的と考えます。またチェーン振りや小型海底流耕機など漁業者自身が参加できる雑海藻駆除技術開発が必要です。コンブ漁場は漁業者の「畑」ですから、「畑」の雑草はまず漁業者で駆除することが大切です。そのためには雑海藻駆除に対する漁業者の十分な理解が必要です。
(釧路水試 増殖部 名畑進一)