水産研究本部

試験研究は今 No.133「道東海域の浮魚の魚種交代(2)」(1993年2月5日)

道東海域の浮魚の魚種交替(2)

  前回は、道東海域の浮魚の魚種交替のお話のうち、過去において、どんな魚種がとれだけ漁獲されてきたかという「浮魚の多獲状態」についてご紹介しました。

  今回は、優占種の出現状態からお話しを進めたいと思います。

1.浮魚優占種の出現状態

  昭和30年以降、サンマ・スルメイカ・マサバ・マイワシが次々と出現し、多量に水揚げされましたので、その優占出現期問(図1)について述べてみます。

  まず、サンマとスルメイカの時代が昭和30年から37年まで8か年、続いてマサバとスルメイカの時代が38年から7か年、次にマサバ優占時代が45年から6か年、そして51年以降マイワシが卓越出現し、その時代が平成3年まで16年間も続きました。各魚種が道東海域に優占出現したのは、それぞれの資源量が多く、生活の場を餌生物量が多い北部漁場まで拡大したためです。

    • 図1

2.魚種交替の過程

  道東海域でマイワシの来遊資源量が減少したのは昭和60年以降、水揚量が目立って減ったのは、それから4年後の平成元年からです。さて、平成2年のマイワシの漁場範囲(図3(1)~(3))を見ると、かつてマイワシ資源が増加中の昭和52年(図2(3))よりも大幅に縮小しました。また、1操業当り平均漁獲量も昭和59年のこれまで最高300トンから平成2、3年には170トン台と、これも著しく低下しました。マイワシ資源の大幅な減少が漁場範囲の縮小となりました。一方、平成2年にスルメイカ資源が回復し、道東沿岸域にもまとまった漁場が形成(図3(1))されました。以降、この資源が増加し、漁場範囲を拡大してきたので、かつてマイワシが独占していた沿岸漁場は完全にスルメイカに替わりました。水揚量も道東4港で平成2年1万トン,3年3.5万トン,4年5万トンと急上昇し、資源量が多いことを示しています。また、スルメイカ漁場の沖合一帯は、サンマ漁場で占められています。このことから、魚種交替は平成2,3年ころから始まっているようです。当分の問、スルメイカとサンマが優占出現し、その後マサバに替わる可能性もあります。

  なお、スルメイカやサンマ資源はいつまで安泰なのか、またマサバ・マイワシ資源はいつ回復するのか、それらを明らかにするため釧路水試では浮魚類の資源及び漁場調査を継続していますので、関係漁業者の一層のご協力をお願いします。
(釧路水試特別研究員 小林 喬)
    • 図2、図3