水産研究本部

試験研究は今 No.137「ケガニの中間育成の話」(1993年3月12日)

ケガニ中間育成の話

  ケガニの種苗生産は、現在日本栽培漁業協会の宮古と厚岸の両事業場で行っています。事業場では、ふ出直前の黒い卵を抱えた雌ガニを天然から採集し、これをふ化させます。ふ化した幼生は水槽内でメガロパ期まで飼育します。このようにして育てられたメガロパ幼生は、親の形に似ていますが、まだふんどしになるお腹を延ばして泳いでいます。このまま飼育を続けても稚ガニヘと成長しますが、この間の減耗の大きいことが問題となっています。そこで現在はメガロパの段階から海中で中間育成を行っています。噴火湾内では直径60センチメートルの通称「円錐カゴ」を用いてホタテガイ用の幹綱にそれを吊し、2~3か月付設しておきます。この中にメガロパを収容しますが給餌はしません。この問、カゴに付着する生き物を食べているようです。

  また、噴火湾では天然のメガロパも採集されます。5~6月ころ表層を網で曳くと多いときには数万単位で入ります。このメガロパもできるだけ多く生き残れるように水槽生まれのメガロパと同様カゴに入れ中間育成を行います。

  これまでの試験の結果、効率よく稚ガニの回収を行うには、1カゴにメガロパを100尾程度収容するのが良いということが分かりました。最初はメガロパを数えてカゴに入れていましたが、作業に手間取ることや、手で触れることを避けるため、現在は100尾程度入る容器を使用し、作業を行っています。また当初は、カゴ内での共食いを防止するためシェルター(隠れ場)を入れていました。しかし、結果はシェルターを入れても入れなくても稚ガニの生残数はほとんど変わらないことから現在は何も入れていません。

  このようにして中間育成を行った結果、稚ガニの回収率が30~40パーセント期待できるところまで来ました。この時の稚ガニの大きさは甲長11ミリメートル位になります。

  大きくした稚ガニは、水温が高くなる前に放流します。しかし、放流した稚ガニは、やがては天然のものと混じってしまい見分けがつかなくなってしまいます。そこで、中間育成後の稚ガニを使って一定区画の囲いの中に収容し、その後の成長を実際に追跡しようとする新しい試みが日本栽培漁業協会を主体として、最近始まりました。この囲いのことをナーサリー(保育場)と呼んでいます。ナーサリーの規模は、縦・横5メートル、高さ1メートルで鉄製のものです。現在、砂原沖に3基、有珠沖に1基が設置されています。その中に甲長11ミリメートル前後の稚ガニ約2,500尾を収容して試験を行っています。この試みが成果をあげ、成長や生残などの放流効果が把握できるようになれば、ケガニ栽培漁業の推進に大きな期待ができるのではないかと今後の推移に注目しているところです。
(栽培センター沿岸部 中島幹二)
    • ケガニの種苗生産

トピックス

試験研究プラザ開催のお知らせ

平成4年度の水産試験研究プラザが、各地域で次のとおり開催される計画になっています。多くの皆さんの参加をお待ちしています。

[中央水試管内]
『岩宇地区プラザ』・・・カレイ類・ヒラメ、スケトウダラ、エビ
日時:平成5年3月22日(月曜日)午後2時~
場所:泊村公民館
『古平地区加工ミニプラザ』
日時:平成5年3月26日(金曜日)午後1時~
場所:古平町水産加工業協同組合会議室

[網走水試管内]
『網走西部地区プラザ』
日時:平成5年3月18日(木曜日)午後1時30分~
場所:紋別漁業協同組合会議室
『網走中部地域プラザ』
日時:平成5年3月19日(金曜日)午後1時30分~
場所:常呂漁業協同組合漁村センター

[稚内水試管内]
『増毛地域ミニプラザ』・・・ウニ、アンコウ
日時:平成5年3月26日(金曜日)午後3時~
場所:増毛町漁村センター

[函館水試管内]
『松前地域ミニプラザ』・・・ヒラメ
日時:平成5年3月19日(金曜日)午後4時~
場所:松前町漁民センター
『江差地域ミニプラザ』・・・エゾバカガイ
日時:平成5年3月15日(月曜日)午後4時~
場所:江差町桧山支庁
『江差地域ミニプラザ』・・・ヒラメ
日時:平成5年3月22日(月曜日)午後4時~
場所:江差町桧山支庁