水産研究本部

試験研究は今 No.139「平成5年度水産試験研究事業紹介-1」(1993年3月26日)

平成5年度水産試験研究事業紹介-1

  水産試験研究機関で平成5年度から新たに開始する試験研究の主なものについて、その内容をご紹介します。
  今回は水産試験場についてです。

1.かれい類刺網漁具の漁獲機構解明試験

  カレイ類は北海道の沿岸漁業にとって重要な資源であり、主として刺網で漁獲されていますが、近年、資源量が減少傾向にあり、また、漁獲されるカレイ類の小型化が目立っています。

  このような状態にあるカレイ資源の回復を図っていくためには、様々な対策を検討・実施していく必要がありますが、その一つとしてカレイ刺網の形などを資源保護に有効なものに改良していくことが考えられます。

  このため本研究は、どのような形の刺網であれば、小型カレイの保護に有効かを解明することを目的としています。

  とりわけカレイ刺網では、締結(イセ)の違いによる網目の形状の変化が、漁獲性能を左右する要因となっていることがある程度分かってきていることから、様々な目合、締結の刺網でカレイ類の漁獲試験を行い、目合、締結がカレイの漁獲に具体的にどのように関係するか、そのメカニズムを具体的に明らかにするとともに、その結果を踏まえて、現在使われている刺網の目合、締結などをどのように改良すれば、小型カレイの保護が可能となるかの指針を作成することとしています。

  この指針を基とした適正な形状の刺網が普及すれば、カレイ資源の保護に大きく貢献することになるため、その成果が期待されます。

2.ケガニ栽培漁業技術促進試験

   本道の沿岸漁業にとって重要な資源であるケガニ資源の増大を図るため、水産試験場では昭和63年度より、天然種苗(メガロパ幼生)を採集し、これを中間育成して稚ガニとしていく技術の開発を行ってきました。

  その結果、中間育成技術についてはほぼ目途が立ってきていますが、この技術を活用していくためには、天然種苗の採集をより効率的なものとしていくとともに、中間育成した稚ガニの自然界での生残率の向上を図っていく必要があります。

  そこでこの研究では、効率的な採苗を行うために、どのような時期・海域に、天然種苗が大量に出現するかを予測するためのシステムを開発することにしています。

  また、中間育成した稚ガニの放流後の生残率を高めていくため、どのような生息環境(水温、底質等)の場所に、どのような方法で放流したら良いか、また、稚ガニを害敵から保護していくためには.どのような保育施設を設けたら良いか、などについても調査・解明していく予定です。

  これらにより得られた成果を基にして、最終的には、天然種苗採集→中間育成→放流→稚ガニ県護育成→資源増大という一貫した技術を確立することを目指しており、これが実用化されれば、ケガニの資源増大に大きく貢献することになります。

3.アメリカオオアカイカ利用加工技術開発試験

アメリカオオアカイカ
  アカイカは、珍味等の原料として重要な魚種であり、本道の水産加工業はこれに大きく依存していましたが、これを漁獲対象としていた流し網漁業が本年1月から全面的に停止となったため、水産加工業界に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。このため、代替原料として注目されているのが「アメリカオオアカイカ」です。

  このイカは、太平洋のペルー沖や、メキシコ沖などに分布しており、体長が70センチメートルに達するものもあるという大型のイカで、近年は北海道へも水揚げされています。

  しかしこのイカは、アカイカに比べて塩味や酸味が強く、また加熱すると身が著しく収縮し、重量も大幅に減少するなど、加工する上での大きな難点を持っています。また、これらの肉質や味の問題は、魚体の大小、雌雄、漁獲時期、場所によりかなり違うようですが、これについても十分把握されていないのが現状です。

  このため本研究では、まず、漁獲時期、場所等別の漁獲物の成分を正確に把握し、加工する上で支障となっている塩味、酸味などの除去や、身の収縮防止を行う技術を開発するとともに、これを基にして、既存のイカ加工品への利用方法の確立や、新たな製品の開発などを行っていこうとするものです。

  なお、この研究については、本道と同様にアカイカヘの依存度が高い青森県、岩手県、宮城県の各水産試験場と役割分担を行いながら共同して実施することになっています。
これにより、アメリカオオアカイカが加工原料として大いに活用されるようになれば、本道の重要な地場産業である水産加工業の振興に大きく寄与するだけでなく、アメリカオオアカイカを対象とする漁業の発展をも促すこととなるため、その成果が期待されます。
(水産部漁政課研究企画係)