水産研究本部

試験研究は今 No.146「北の魚-第4回アイナメ-」(1993年6月4日)

シリーズ北のさかな -第4回 アイナメ-

  北海道では「あぶらこ」と言った方が分かりすやいでしょうか。私は、10年あまり前、東北の宮城県でアイナメの成熟・産卵を調べたことがありました。

  宮城県では、アイナメは「ねう」と呼ばれ、高級魚として親しまれています。ねうは「根魚」と書き、その名のとおり根付きの魚として、漁業はもちろん、いそ釣りの格好の対象です。酢醤油で食べる刺身は、ほど良く脂がのり、これを肴に地酒をやるのが一番です。
 
  三陸海岸の南端に位置する宮城県女川町で、前浜のいそに潜り、アイナメを観察する機会がありました。秋になり水温が16?17度より下がるとアイナメの産卵が始まります。卵は塊になって岩の上に産み付けられ、ふ化まで雄に守られます。産卵期の雄親は、からだ全体が黄一色になるのですぐに目につきます。

  何回か潜るうちに水深3メートルあたりで卵塊を守る大きな雄のアイナメと「なじみ」になりました。その雄は、一畳ほどの広さに散らばる数個の卵塊の間を行ったり来たり、時折、ほかの魚に会うとしつこく追いかけ回していました。

  水温が12度を下回り産卵期も終わりに近づいた11月下旬、その雄と卵塊を採集することにし、まず、水面からやすでその雄親を仕留め、引き揚げました。と、周りの岩かげに隠れていた小さいアイナメが、途端に卵塊めがけて突進してきたのです。その数、何尾かあまりの早さと尾数に数えきれません。私は、慌てて潜り、卵を採集しましたが、一部分は突進してきたアイナメに食べられてしまいました。卵を守っていた雄は全長40?を超す大物でしたが、卵保護のエネルギーは相当なものであったに違いありません。

  一方、雌は産卵期間中、何回も腹が膨れて産卵します。それは、自分の体に比べて大きな卵を数多く産むための、かつ、また、ほうぼうに産みつけて少しでも多くの子を残す機会を増やすための努力なのです。産卵のための雌のエネルギーも大したものと言えましょう。

  ある時、女川近くの松島水族館で、アイナメの産卵の予行演習らしきもの(実は失敗?)を見ることがありました。産卵場所を確保した雄が腹の膨らんだ雌をつついて誘うと、その雌は雄からの数度の誘いにやっと応じ、体を震わせながら岩に腹部をこすりつけました。その後すぐに雄も続きましたが、産卵はしていませんでした。ところがその瞬間、それまで「素知らぬふり」だった周りの魚たち、ほかのアイナメはもちろん、一緒に入っていたタイ、メバル、ソイ、カレイなどが一斉にその「産卵場」に群がり、一時「パニック状態」になったのです。これには驚きました。産卵していれば卵を守る親の姿が見られたのでしょう、お家安泰の正念場を見損じた思いでした。
(網走水試漁業資源部 佐藤 一)
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浜の要望に即応した試験研究をめざして 中央水試-プラザ連絡会議開催-

  去る5月14日(金曜日)中央水試では、余市町の余市郡漁協漁民研修会館において、「石狩・後志地区水産試験研究プラザ連絡会議」を開催いたしました。

  この“連絡会議”は、市町村、漁協・系統と道の関係機関が一堂に会し、試験研究機関に対する浜の要望を的確に把握し、これからの調査・研究に反映していくことを主な目的に、平成3年度から行われているもので、今年で3回目です。

  当日は、石狩・後志管内の市町村及び漁協の担当職員と道の関係機関合わせて約90人が集まりました。

  会議では、まずはじめに主催者を代表して斉藤場長の挨拶があり、次いで昨年度のプラザの取組状況の報告が行われました。そして畑谷副場長を座長として、各漁協への事前アンケートからとりまとめた今年度の要望事項とその対応について、増殖、資源、海洋、加工のそれぞれの部門ごとに、各部長が説明を行いながら協議検討を進めていきました。

  各地からの要望には、「シャコ資源の新漁法技術開発」、「ヤリイカの生態調査、産卵礁に関するデータ収集」、「磯焼けの原因究明と対策」、「エゾバカガイの増殖」、「水産振興の情報基地的役割」など多くのものが出されていました。

  最後に、今年度の地域(ミニ)プラザ開催計画について各地の要望をふまえた企画案を承認し、閉会しました。
(中央水試 企画情報室)
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