水産研究本部

試験研究は今 No.254「~ホタテガイの新たな食品としての需要を求めて~」(1996年2月16日)

試験研究は今 No.254「〜ホタテガイの新たな食品としての需要を求めて~」(1996年2月16日)

~ホタテガイの新たな食品としての需要を求めて~

はじめに

  ホタテ貝の消費を喚起するひとつの方法として、家庭での調味汎用性を高めることがあげられます。そこでフレーク状食品素材や、冷凍食品素材、電子レンジおよびレトルト調理晶を効率よく製造し、生理活性物質を含有した新規食品素材の開発を行うことを目的としてホタテガイ新需要開拓技術試験を行っています。今回は特に、家庭での調理汎用性が高まると期待されるホタテ生貝柱からのフレーク製造法とフレークを用いた試作品の製造について紹介します。

ホタテ貝柱フレークの製造方法

  まず、フレーク製造のために貝柱の加工方法と、加工された貝柱をフレークにするための条件について説明します。

  最初にフレーク製造のための貝柱の加工方法を図1に示します。工程中のキーポイントですが、貝柱に付着している砂、はちまきなどを丁寧に取り去ること(内臓來雑物除去)が必要です。ここでいい加減な処理を行うと、製品化したフレークの品質に影響を与えるので注意して下さい。貝柱の洗浄では、貝柱を長時間水に晒して水ぶくれさせないようにして下さい。煮熟は貝柱の5倍容の食塩水で行い、再沸騰後16分から23分間煮熟を続けます。煮熟時間が長いほど、硬めのフレークができます。食塩水の濃度は、3%から8%の間で調整すると良いでしょう。8%食塩水で再沸騰後23分煮熟したときの貝柱の塩分は4.5%でした。また、このときのホタテむき身に対する煮熟貝柱の歩留まりを表1に示しました。

  次に、煮熟貝柱をフレークにする方法ですが、単に煮熟した貝柱を切り刻むのではなく、貝柱の繊維感を残したフレークを製造することと、省力化をはかるために、この工程を機械により行うことが必要となりました。そこで、金属刃を高速回転させて切断、混合を行うフードカッタに注目し、使用する刃については、通常の金属刃、自作した合成樹脂(ポリプロピレン製、厚さ1.5および3.0ミリメートル)刃を用意し、貝柱の粉砕および調味条件について検討しました。

  通常に装着した金属刃、および逆向きに装着した金属刃では、15~30秒でホタテ貝柱の繊維が切断され、ホタテ貝柱特有の食感を失いました。また、このような短い破砕時間では、調味液の均一な混合も困難であると考えられました。厚さ3ミリメートルのポリプロピレン製刃では、金属刃よりもホタテ貝柱繊維の切断を生じにくいものの、破砕時間が90秒以上になると繊維が軟弱化し、玉になりました。厚さ1.5ミリメートルのポリプロピレン製刃では、90~120秒破砕してもホタテ貝柱繊維が切断されず、ホタテ貝柱特有の食感が保たれ、手裂きに近いフレークが得られました。しかし、120秒を超えると、厚さ3ミリメートルの刃と同様な結果になりました。以上から、フードカッタに厚さ1.5ミリメートルのポリプロピレン製刃を装着し、煮熟ホタテ貝柱を90~120秒間破砕することにより、手裂きに近いホタテ貝柱フレークが製造できることがわかりました。調味を行う場合は、破砕開始後15秒で調味料を添加すると良いでしょう。

  なお、調味料は水溶液とし、ホタテ貝柱2キログラムに対し、30~50ミリリットルの割合で調味液を添加しました。調味液は8%食塩水で煮熟したホタテ貝柱に、それぞれ終濃度として0.2%グルタミン酸ナトリウム、2%ソルビトールになるよう添加しました。3%食塩水、および5%食塩水で煮熟した場合、煮熟貝柱の塩分はそれぞれ約1.4%、約2.0%となります。塩味を強めた場合は、調味液に食塩を加え、希望する塩分になるよう調整すると良いでしょう。

ホタテ貝柱フレークを用いた試作品製造

  3種類の市販されたチーズスプレッド(バンにぬるタイプのチーズ)と貝柱フレークを混ぜました。フレークとチーズの割合は1:2でした。フレークの増量を希望する意見もありましたが、塗り易さの点から考えた割合は1:1でした。いずれの試作品ともパンとの相性は良く、用途としては、サンドイッチ、トースト、サラダ、カナッペ、チーズ入りオムレツなど、組み合わせにより用途が広がると考えられました。(釧路水産試験場 利用部 北川雅彦)
    • 図1
    • 図1-2
    • 表1