水産研究本部

試験研究は今 No.255「試験研究地域プラザを開催する」(1996年2月23日)

試験研究は今 No.255「試験研究地域プラザ開催する」(1996年2月23日)

試験研究地域プラザ開催する

  平成8年2月2日函館市ホテルオークランドにおいて「試験研究地域ブラザ」を開催しました。
 
  「試験研究地域プラザ」は水産試験場の担当する地域を対象とし、共通する魚種・課題をテーマとして実施されるものです。平成5年度から全道水試で持ち回りで行われていますが、函館水試では今回初めての開催となりました。

  函館水試は、桧山、渡島、胆振、日高支庁管内の非常に広い範囲を担当地域とし、海域も日本海、津軽海峡、噴火湾、太平洋と異なる特徴を持つ海域を有しています。

  このように広い地域、異なる海域に共通する魚種、課題として選定したのが、栽培対象種の中で現在最も注目され期待の大きい、日本海から津軽海峡の「ヒラメ」と噴火湾から太平洋の「マツカワ」です。
技術開発の現状、問題点、展望をテーマに開催したところ漁業関係者中心に総勢約120名の出席者があり、ヒラメ、マツカワへ寄せる期待の大きさが伺われました。

  そんな中、函館水試富田場長の挨拶を冒頭に、話題提供が3題と中間育成施設からの情報が3題発表されました。最初に、平成8年度から開始されるヒラメ種苗の大量放流に向け函館水試資源管理部石野科長から「人工種苗ヒラメの放流効果について」が発表されました。標識放流や市場調査の結果から、種苗放流後70%以上が放流地点から半径30キロメートルで再捕され、放流する人が漁獲する人になることや、回収率が8センチメートル放流群(余市湾)で12.1%とサケに比べても相当高く、放流効果が期待できることが展望として報告されました。
しかし、商品価値の低い小型魚の漁獲が多い実態にあることから、今後、栽培資源の合理的な利用が必要である旨の問題提起もありました。

  次に、栽培漁業総合センター森研究職員から「マツカワの種苗生産の現状と展望」が発表され、親魚の確保、疫病予防、自然産卵法の開発などが主要な課題として報告されました。また、低水温でも成長が良いことや単価が高いことなどから、北海道に適した栽培漁業の有望な対象種との展望も示されました。

  最後に話題提供として、函館水試資源増殖部松田研究職員から「マッカワ人工種苗放流の現状と問題点について」発表がありました。天然魚の生態等の知見が少ないことや体系的な調査が始まったばかりで、標識の種類や再捕データの整理を進めており、放流魚は80%以上が放流点から30キロメートル以内で2歳魚までのものが捕獲されていることが報告されました。日高海域では昨年12月に45尾が漁獲され、その内43尾が人工種苗であったとのことです。また、成長は1歳魚20センチメートルで放流後、翌年夏には約35センチメートル、冬には40センチメートルになることなどから、放流効果が十分期待できるとの発表でした。
中間育成施設からの情報として3人の方に発表していただきました。
  • 知内町漁協ウニ人工種苗生産センター
    • 知内漁業協同組合伊藤主任
  • 伊達市温水養殖センター
    • 伊達市温水養殖センター沖崎主任
  • えりも町ウニ種苗生産施設
    • えりも町水産課三戸普及指導係長
  その内容は、事業を推進する上で共通する問題点として、施設の老朽化、種苗の確保、急病などが切実な問題であるとお話があり、解決に向け関係機関に協力、努力してほしいとの要望がありました。また、浜の方々の栽培漁業への理解と意識向上を図るために、地域で取り組んでいる事業の内容などもお話いただきました。多岐に渡り貴重な発表をしていただき、出席者の方たちも普段あまり知られていない、施設での現状や取組について理解を深めていただいたものと思います。発表終了後、総合討論を行い出席者から質問、意見交換が活発に行われた後、栽培漁業総合センター大畑場長閉会挨拶をもって盛会のうちに終了しました。(函館水試企画総務部 主査 杉田弘之)

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  函館水試、ひやま漁協ではヤリイカの標識放流を行っています。捕獲された方、発見された方は、近くの普及指導所か水産試験場にご連絡ください。
    • ヤリイカの標識放流