水産研究本部

試験研究は今 No.260「平成8年度新規水産試験研究事例の紹介」(1996年4月12日)

試験研究は今 No.260「平成8年度新規水産試験研究事業の紹介」(1996年4月12日)

平成8年度新規水産試験研究事業の紹介

  平成8年度から新たに取り組まれる試験研究事業のうち、前回は、日本海ニシン増大対策事業について紹介をいたしましたが、今回は、水産試験場と水産艀化場で新たに取り組まれる事業について、紹介したいと思います。

水産試験場

1.噴火湾周辺海域ケガニ資源管理対策調査
  噴火湾周辺海域のケガニ資源は、過去に2度の禁漁を行い、資源を増やす方法を探ってきましたが、依然資源水準は低いままです。そこで、この海域のケガニの季節的な分布や移動を調査し、また、漁獲データーを収集することにより、この海域に合った資源管理モデルを作成し、より精度の高い資源管理を目指します。
 
2.道南日本海におけるバカガイの増殖技術に関する試験
  バカガイは、道南日本海海域においてウニ・アワビに次いで重要な浅海資源となっていますが、十分な調査のないまま資源管理が行われています。今回の試験では、資源の補充に大きな影響を与える、1齢以降の成長・分布・減耗などを調査します。また、地元で竹やれている人工種苗の放流事業の効果を上げるため、放流適地の調査を行います。
3.ヤマトシジミ天然採苗試験
  網走湖のヤマトシジミは、網走湖において漁獲されるだけでなく、藻琴湖をはじめとする他の湖に移植する種苗としても利用されています。しかし、網走湖の8割を占める水深5メートル以深帯は無酸素層に覆われているため、ほとんどの浮遊幼生は死んでしまいます。そこで、湖面の浮遊幼生を天然採苗する技術を開発することにより、天然採苗した種苗の中間育成・移植放流への道を探ります。
4.水産廃棄物の機能性糖質利用技術開発試験
  水産物を加工するときに出る残さいや、ヒトデ・キンコなどの漁業駆除物は、そのほとんどが産業廃棄物として捨てられていますが、糖質・蛋白・脂質など多くの有用物質が含まれていると考えられています。

  このような有用物質の量や抽出方法を開発することにより・漁業系廃棄物の減量化と有効利用を目指します。
5.サケフィレ-の高品質保持技術開発試験
  サケ製品は、最近の消費者ニーズにより、生や低塩の切り身を含むフィレー製品は、需要が増してきています。

  しかし、フィレー製品は、新巻きより製造過程や輸送中の微生物汚染を生じやすく、品質保持がむずかしい状況にあります。そこで製造過程や輸送中の温度などによる、微生物数の増減の推移や冷却オゾン水などによる洗浄・殺菌効果などを試験することにより、フィレ一製品の安全性の向上や高品質化を目指します。

水産艀化場

1.シシャモ新ふ化技術事業化検討試験
  えりも以西太平洋海域におけるシシャモの漁獲量は、近年激減し、休漁という最終手段をとることによって、少しずつ資源の回復を図るとともに、人工ふ化放流技術の開発を行ってきました。
平成7年度までの試験によって、新ふ化技術を開発することは出来ましたが事業化にむけて、さらに、卵収容効率の向上・水量の検討・用水のろ過方法・結氷対策などについて試験を行います。
2.河川流入物質による培養殖環境への影響調査試験
  ここ数年、河川流入物質が原因と思われる魚類のへい死が増加している傾向にあります。これらは、酪農地帯での、し尿や堆肥、科学肥料の河川への流入によるアンモニア・亜硝酸・硝酸や依然継続的に降り続けている酸性雨(雪)が原因の1つと考えられています。

  今回の試験では、酪農系排水に多く含まれるアンモニアなどのサケ・マスに与える影響や河川・湖沼における酸性物質のモニタリングを行い、被害防止対策や環境評価の基礎とします。
3.ニジマスヘルペスウイルス感染症対策試験
  近年、内水面養殖の主要魚種であるニジマスの成魚にヘルペスウィルス感染症が発生し、養殖業者の経営に壊滅的な打撃を与えています。このため、平成5年度から、病気の診断・ワクチンなどの開発を目的として、このウィルス遺伝子の解析を行ってきましたが、サケ・マス類の病原ウィルスに関する研究は、日本では、ほとんど前例がなく、遺伝子を解析する技術の習得に時間を要し、また、遺伝子の大きさも予想以上に大きかったため、全てを解析することが出来ませんでした。

  しかし、未だにヘルペスウイルス感染症の被害対策は確立されていないので、養殖業者の経営の安定を図るためにも、早急に遺伝子の解析を目指します。(水産部漁政課)