水産研究本部

試験研究は今 No.262「木古内湾のマコガレイの資源状態は~(知内町漁協、木古内町漁協で開催されたミニプラザの質疑から)」(1996年4月26日)

試験研究は今 No.262「木古内湾のマコガレイの資源状態は?(知内町漁協、木古内町漁協で開催されたミニプラザの質疑から)」(1996年4月26日)

木古内湾のマコガレイの資源状態は?(知内町漁協、木古内町漁協で開催されたミニブラザの質疑から)

Q1木古内湾で漁獲されている「真がれい」がマコガレイだったということはよく解りましたが、ほかにもマコガレイが獲れているところはありますか?

A1津軽海峡周辺でマコガレイが漁獲されているところは、陸奥湾、津軽半島日本海側、下北半島の関根浜と木古平湾です。このうち、木古内湾の漁獲量が最も多く200~300トン、次いで津軽半島の100トン前後、陸奥湾の50トン前後、下北半島の20~30トンです。

Q2これらのマコガレイは行ったり来たりしているのですか?

A2少なくとも木古内湾の群は独立していると思われます。産卵盛期がどの群とも違う時期になっていることが一番の根拠です。木古内湾の群は3月が産卵盛期で、陸奥湾は12月、下北半島は1月下旬~2月上旬、津軽半島は4月下旬~5月上旬なのです。このことはそれぞれの親が同じ時期に成熟しないことを示しています。例えば、陸奥湾の雄の精子で木古内湾の雌の卵が受精することはないわけで、混じり合って増えたり減ったりしていないということです。要するに、木古内湾のマコガレイは系群として独立しており、木古内湾に面している地区の漁業者の方々の努力次第で資源管理も可能ですし、乱獲もあり得るということになります。

Q3マコガレイの旬はいつですか?

A3試験場では、最も漁獲量の多い知内町漁協市場のマコガレイを毎月測定してきました。一番肥え太っている時期が肉にうま味もあり、旬といえると思いますが、それは7月です。マコガレイは、大分県の「城下がれい」で、食通には良く知られた高級魚ですが、夏が旬とされており、木古内湾のマコガレイも同じということです。刺身で美味しい魚ですね。

Q4マコガレイがクロガシラカレイと同じかも知れないとの説明でしたが、どういうことですか?

A4魚の分類の本によると、マコガレイとクロガシラカレイを見分けられるのは、背鰭や尻鰭の黒い縞模様があるかないかだけになっているのです。あるのがクロガシラカレイで、ないのがマコガレイとのことですが、木古内湾のマコガレイといわれるものに、クロガシラカレイより薄目ですが、黒い縞模様のあるものがいるのです。本州方面の活魚の流通業者に言わせると黒マコと言うことで値も安いとのことです。
それで、北大の大学院生に、クロガシラカレイとマコガレイの遺伝学的な違いを課題として研究を分担してもらってきたのですが、木古内湾の黒い縞模様のあるマコガレイも含めて、マコガレイとクロガシラカレイでは遺伝的に差がないとの結果がでできたのです。学術的に同じ種類との結論」に至るまでには、さらに研究を進めなくてはいけません。まだまだ先の話しではありますが、分類学的に同じ種として整理される場合は、マコガレイの名が古く、今クロガシラカレイといわれているものが、すべてマコガレイの名になるということです。いずれにしても、木古内湾の黒い縞模様のあるマコガレイも正真正銘のマコガレイだということには変わりありません。

Q5知内町ではマコガレイのポスターを作ったり、高級レストランのシエフに料理を創作してもらい、一生懸命宣伝し始めているのですが、これからもマコガレイが安定して漁獲できるのでしょうか?

A5国の補助事業である「資源管理型漁業推進対策事業」による調査研究を2年間続けてきました。この事業の目的は、今、資源源状態がどうなっているか、そして、今後、資源水準を高め、安定的に漁獲していくためにどんな工夫をしていくか、いわゆる資源管理の対策を検討することにあります。その結果の一つとして、資源評価があり、ひとことで言うと大変いい状態にあると言えます。
寿命年齢と判断される13歳の高齢魚が採取されたことは高齢まで生き残っている証拠です。さらに、小型魚が一定割合ですが、毎年安定的に漁獲の対象として加入してきています。これは、毎年安定的に産卵ふ化が繰り返されていることを示すものといえます。漁獲統計を見ても木古内湾では過去10年に渡って200~300トンの間で安定しており、資源状態が良好であることを物語っています。まだ、部分的な解析でしかありませんが、Y/R法といって、加入当たり漁獲量の解析もしてみたところ、資源の使い方とすれば余裕を持った状態との結果も出ております。しかし、漁獲努力量を強めて漁獲量を増やすよりも、今とっている小型魚の漁獲量をより少なくし、漁獲対象となる資源の年齢構成を高くしてやることが有効な資源の使い方との答えもでています。それ以上に、マコガレイとしてはまだまだ値段が安いと思われ、ブランド化や商品差別化をすすめ、知内町のような宣伝を木古内湾全体で進めていくことが必要と思います。資源管理型事業に取り組んでから、マコガレイを漁獲している地区の漁業関係者はマコガレイと呼ぶようになってきました。函館市内のスーパーや魚屋さんでもマコガレイの名前で堂々と売られるようになって欲しいものです。
そのためには、まずは知内や木古内の町民の方々が「真がれい」ではなくて「まこがれい」と呼ぶように町内宣伝をしっかり始めてもらいたいと思います。(函館水試資源管理部、佐野 満廣)