水産研究本部

試験研究は今 No.270「枝幸漁協問牧ウニザル研究会が農林水産大臣賞を受賞」(1996年7月5日)

枝幸漁協問牧ウニザル研究会が農林水産大臣賞を受賞

はじめに

  平成8年2月29日~3月1日に開催された「第1回全国青年・女性漁業者交流大会」で、本道の代表として参加した4グループのうち2グループが農林水産大臣賞を受賞しました。ここでは漁業技術部門で発表された、枝幸漁協問牧ウニザル研究会の「問牧ウニザル開発試験」の中から、・グループの組織、・開発の動機、・開発の経過、・捕獲方法、・捕獲試験について紹介したいと思います。

グループの組織

  問牧ウニザル研究会は、平成4年に問牧地区でウニ漁業に従事すち漁業者で設立され、現在11名で活動しています。主な活動は、エゾバフンウニの培養殖と漁労技術に関する試験研究、先進地視察等です。

開発の動機

  問牧地区は小型(40ミリメートル未満)のエゾバフンウニが高密度(約50個体/平方メートル)に分布しており、海藻類の着生がほとんどみられず、実入りや成長の悪い海域です。そのためこの小型のウニを有効に利用する事にして、昭和62年より種ウニ出荷を始めました。平成4年までは最干潮時に水深1メートル前後の所で、胴付きを履き、タモにより捕獲していました。しかしこの方法では捕獲時間、水深、海水の濁りなどに作業が制約され、出荷量を満たすのに長い期間を必要としました。又、岩についているウニを無理にはがすため、傷つける欠点もありました。これらの問題点を解決するため、タモ以上に効率が良く、捕獲時間、水深、海水の濁りに左右されないウニ捕獲方法の検討が、研究会でなされ、種ウニの捕獲作業中流れコンブに多くのウニが群がっていたことに着目し、ウニをおびき寄せて捕獲するザルの開発に取り組むことになりました。

開発の経過

  会員間で協議検討を重ねた結果、漁業者が制作しやすく、製作費も安い簡単な構造であること、餌に群がるウニの習性を利用すること、付いたウニがはがれやすいこと、餌の交換が簡単なこと、岩場に底面が密着し安定性があること等の条件が満たされる構造のものを考慮する事になりました。最初の条件から、籠状ではなく、平網構造(ザル)の型に決め、枠の形状、餌入り、網目合い、餌投入口、枠の素材と平網のたるみ等について工夫することにしました。その結果枠は安定性を増すために鉄筋を使用し、製作しやすいように四角形としました。平網は岩の凹凸に沿うようにたるみを持たせ、岩陰にいるウニが網を伝わって餌袋までたどり着きやすいようにしました。目合いはウニが餌まで楽にくぐっていけ、はずすときには網目に掛からない大きさの4寸目(12センチメートル)としました。平網の素材は最初ハイゼックスを使用しましたが、思ったより岩場への密着が悪いため、クレモナに変えたところ、網のたるみが岩場に沿うようになりウニの捕獲数も増えました。餌袋は、平網と同じ網地を使いコンブを入れたときに膨らむように余裕を持たせ、餌が固定されるよう周囲に目通し網を張りました。餌投入口は餌の出し入れが簡単で餌が抜けでないように中古のタイヤチューブを切断したものを使用し、口の両サイドに張り網を付けました。(チューブの強度が弱くなったら、餌投入口の両サイドの張り網を締め、口の張りを強めます。)4本の山網の先に浮子を付け、山網がウニに触れないように浮かしました。

  ザル1枚の重量は、2.2キログラムで、水中重量は、1.7キログラムとなりました。

  製作は仕事が一段落した冬期に全員で行った結果、資材費は約1000円ですみました。

捕獲方法

  水深1~3メートルの地点にザル(1基:のし網84メートルにザル15枚付ける)を設置し、翌日にウニを捕獲、捕獲後は餌コンブを補充し再度設置します。ザルを引き上げるときは振動でウニがはずれる恐れがあるため、船縁にぶっけたり、しゃくらないように注意します。1隻の作業人員は船頭、引き上げ、ウニはずし、餌入れの4人です。ウニの付き方は約8割が平網をかいくぐりザルの下側の餌コンブに群がり付いています。(写真参照)
    • 捕獲方法

捕獲試験について

  ザル設置前に、水深別(1メートル,2メートル,3メートル)の地点のウニの生息密度と大きさを調べそれらの地点にザルを設置し、翌日捕獲数と大きさを調べました。ザル設置前のウニの生息密度は、3地点とも1平方メートル当たり50個前後でした。捕獲数は、水深1メートルと2メートルが200個以上でしたが、水深3メートルでは、ザルを取り上げる途中でこぼれてしまい125個でした。捕獲したウニの殻径は設置前のウニに比べ、25ミリメートル以下の割合が少なく、小さいウニがのぞかれる傾向が見られました。

おわりに

  平成5年から開発された問牧ウニザルを、種ウニ出荷に活用し、捕獲日数の削減が図られています。又、研究会ではウニの実入り、成長を促進し、むき身出荷を図るため、飾用コンブの作成と給餌方法の開発を行っています。
☆この文章は第41回全道漁村青少年・婦人グルーブ活動実績発表大会資料をもとに、再構成いたしました。
(枝幸地区水産技術普及指導所)(稚内水試水産業専門技術員)