水産研究本部

試験研究は今 No.271「木の葉のごとく-マコガレイ稚魚調査-」(1996年7月12日)

木の葉のごとく…-マコガレイ稚魚調査-

  マコガレイは道南を商業的な分布の北限とするカレイ類で、木古内湾において重要な水産資源です。この木古内湾のマコガレイ成魚については、函館水試資源管理部や北大水産学部により研究が進められ、資源状態や摂飯の生態等がわかりつつありますが、稚魚についての知見はあまりありません。当海域におけるマコガレイ稚魚の生息場所や食性を調査することは、木古内湾における生活史の解明だけでなく、人工種苗を放流する際の適地の検討という観点からも必要なことです。

  そこで、函館水試資源増殖部と専技は、平成7年度から、渡島中部地区水産技術普及指導所、渡島西部地区水産技術普及指導所、北大水産学部と共同でマコガレイ稚魚(当歳魚)の調査に取り組むことになりました。調査を始めるにあたって、これまでの稚魚についての情報を整理してみました。
  • 渡島中部地区水産技術普及指導所が平成5~6年に上磯町茂辺地で6月から9月までカレイの稚魚を観察した。
  • 平成6年8月に木古内町の溝でウニの調査をしたところ、カレイの稚魚が観察された。
  • 福島町浦和港内で、平成6年9~10月に放流ヒラメの追跡調査をしたところ、ヒラメに混じってマコガレイ稚魚が捕れた。
  • 知内の漁業者からは、「4月頃、中の川沖にカレイの稚魚が木の葉のごとく大量に見える。」という情報が寄せられた。
  このような情報をもとに、上磯町から松前町まで、あそこが良い、こちらはどうだという具合に、あちこちの場所で調査が始まったのです(図1)。調査は1本100円のたも(とんぼ網)を買って(冬場は在庫がないので、入手に困りました)、浜辺へ行き、“のぞき"を使いながら捕ったり、たも網を持って、潜って捕ったりする原始的?な方法です。調査に立ち会って頂いた、漁協や町の職員の方々に「そんな方法で捕れるのか?」とひやかされながらも、多い時には1時間に3人で60尾も、カレイの稚魚を捕ることができました。ただ、この方法は人によって、慣れ、不慣れや、上手、下手があるうえ、稚魚も成長とともに逃げ足が早くなりますので、定量的な方法とは言えません。また、捕れたカレイの稚魚も、全てがマコガレイとは限りません。恥ずかしい話ですが、マコガレイの稚魚がたくさん捕れたと思って満足していたら、実はほとんどがイシガレイの稚魚だったということもあります。

  シガレイとマコガレイは大きくなると簡単に区別がつくのですが、全長で3~4センチメートルの、まだ石をもっていないイシガレイとは、区別がつきにくかったのです。
・・・一同、反省。
    • 図1
  平成7年度の調査結果について概要をお知らせします。

  上磯町茂辺地地区から松前町大沢地区までの閉鎖的な場所(水深4メートル以浅)で、マコガレイの稚魚の分布が確認されました。そのうち、木古内町釜谷地区、泉沢地区の平磯を人工的に掘削した構内や福島町岩部漁港内には、~7月に多数の分布が見られました。先ほど述べましたように、定量的な調査はしてませんが、その後、10月~11月以降に、分布数は少なくなる傾向が伺えました。また、この3地区では、数は少ないながら3月まで稚魚を確認することができました。

  一方、上磯町七重浜や知内町沿岸のような開放的な場所では、稚魚を確認することができませんでした。「木の葉のごとく」を想定して調査したのですが、開放的な場所では、この方法ではなかなか見つけるのが難しいようです。成長は、場所によって差が見られましたが、6月に全長3~4センチメートルだった稚魚は、11月には8~10センチメートルになり、その後はあまり成長しないようです。このように、平成7年度は浅いところを中心に調査してきましたが、平成8年度は沖合や開放的な場所での分布状況を、別な方法を考えて調査する予定です。できれば、「木の葉のごとく」舞うマコガレイの稚魚を見つけてみたいと思っています。(函館水試 資源増殖部 松田 泰平、主任水産業専門技術員 伊藤 雅一)