水産研究本部

試験研究は今 No.284「稚内地域水産加工情報研究会を開催(特定中小企業集積活性化支援事業)」(1996年11月15日)

稚内地域水産加工技術情報研究会を開催(特定中小企業集積活性化支援事業)

  稚内水産試験場の加工研究室が平成7年6月で廃止になり、早1年4カ月がたちます。この間、加工技術相談室を開設し、地域加工業者の窓口業務を企画総務部が行うほか、稚内市が平成7年度に中小企業集積活性化に関する臨時措置法に基づき地域指定を受けたことから、当場と中央水産試験場が当該事業の支援機関となりました。研究開発事業は中央水試が担当し、当場は技術者の人材育成や情報収集提供などソフト部門を担当しています。

  今回のテ-マである水産加工技術情報研修会は当該事業の一環として開催しているものであり、特に本年は大腸菌O-157による食中毒が全国で多発し、食品に対する安全性が今まで以上に求められている状況にあることから、殺菌について講演会を開催しましたのでその内容を紹介します。

講師紹介

  講師は、日本オゾン協会副会長中山繁樹氏で関西学院大学を卒業後、同大学理学部助手を経て三菱電機(株)中央研究所に入社、オゾン応用水処理技術を研究しており、国際オゾン協会副会長も努めるなど、第一人者として活躍中であります。

講演内容

1.殺菌とは
  殺菌とは「微生物の生活力をなくすこと」と定義されております。ここでいう微生物は、芽胞、ウイルスなどを含む微生物一般を指しますが、生活力が無くなっても死んでいない場合があり、厳密にいうときは不活性化といいます。よく似た用語に消毒、滅菌、除菌及び防腐があります。除菌以外は微生物に何らかの障害を与える点で共通しています。

2.殺菌の機能
  殺菌の機能は殺菌方法(殺菌剤の種類、濃度等)、微生物の種類、微生物の生存状態により異なり、大変複雑でありますが、おおまかには
  • 構造破壊
  • 透過機能阻害
  • 代謝系障害
  • 代謝系への作用による二次的変化
に分けることができます。

3.オゾンの性質
  オゾンは天然物で残留しない強力な酸化剤であり、性質についての理解が不十分であったり操作法や使用法を誤ると、時として結果的に全く効果を示さない場合がありますので、オゾンの性質を説明します。

ア:物理的性質について
比較的不安定であり、自己分解により酸素に戻り、気中オゾンの半減期は周囲の状況にもよりますが、数時間から十数時間であります。オゾンに水た比較的溶けにくいが、水中オゾンの半減期はPHに依存し、酸性側に長く、アルカリ側に短くなります。

イ:化学的性質について
天然に存在する物質としては最も強力な酸化剤であります。酸化反応速度は反応する相手により大きく異なり、二重結合を切断する反応速度は非常に速いが、飽和化合物との反応は非常に低くなるなどの化学的特性により、オゾンは脱色、脱臭、殺菌に有効です。
有機物とオゾンの反応による生成物は一般にカルボン酸、ケトン、アルデヒドであり、中間的に過酸化水素を含む過酸化物が生成され、過酸化物とオゾンの反応により水酸(OH)ラジカルが生成されます。OHラジカルはオゾンより強力な酸化剤であり、ほとんどの有機物を炭酸や水にまで完全酸化させる能力を持っています。積極的にOHラジカルを生成させる方法を促進酸化処理法(AOP)と呼んでおります。オゾンは人体に対して有毒であるが、不安定であり酸素に分解する技術が確立されおります。
オゾンは強い腐食性を持ち、多くの金属や高分子材料を腐食、劣化させますが、ステンレス、スティールは腐食されません。

4.オゾン発生器の特徴
  工業用オゾン発生器は無声放電を利用したものがほとんどで、オゾン生成機構は大変複雑であります。原料は空気または酸素(純酸素、酸素富化空気)で、原料のガスは高度に除湿する必要があり、水分が含まれているとオゾン発生効率が低下し、ついには発生しなくなります。また、オゾン発生器は冷却する必要があり、不十分であると発生したオゾンガスが熱分解され、オゾン発生効率が低下し、ついには発生しなくなります。オゾン発生器は空気原料の場合、濃度20グラム/Nm3が標準であり、酸素原料では200グラム/Nm3が実用化され、300グラム/Nm3も可能になりつつある。

5.まとめ(研修会の結果)
  今回は殺菌の全般とオゾンを使用した殺菌を研修しましたが、加工業者の方々は真剣に話を聞いており、関心の高さがわかりました。殺菌についてはいろいろな方法や手段があり、それぞれ短所や長所があることから、短所を克服し、より確実な殺菌方法を活用する必要があります。

  より安全性の高い食品や加工品を供給するため、衛生管理の徹底や各工場の施設にあった手法を採用することが大切と考え直したところです。(稚内水試 企画総務部主査 木村)