水産研究本部

試験研究は今 No.276「厚岸のチカについて」(1996年8月23日)

厚岸のチカについて

1.はじめに

図1
  厚岸漁協では、チカの漁獲量が昭和55年以降減少を続け、近年では年間100トン前後の漁獲量にとどまっています(図1)。これは、チカ資源の減少によるものと思われますが、厚岸地先のチカの資源実態はよくわかっていません。そこで、厚岸地先におけるチカの資源実態の把握を目的として、平成7年に、厚岸漁業協同組合の協力のもとに調査を実施しましたので、その概要について紹介します。

2.調査方法

図2
・漁獲統計調査
厚岸漁協「漁業別魚種別取り扱い一覧表」をもとにチカ漁獲量の実態把握を行いました。
・産卵礁調査
チカが産卵していると思われる砂浜で、波打ち際付近の砂を採取し、肉眼で卵を選別した後に、卵の粒径及び付着していた砂の長径を測定しました。
・漁獲物調査
厚岸漁協市場にサイズ別(大、中、小)に出荷されたチカを定期的に購入し、全長、全重量、生殖巣重量の測定及び雌雄熟度の判別、年齢査定、を行いました。

3.これまでにわかったこと

・平成7年の漁獲量を月別にみると、5月に全体の約30パーセントにあたる46トンの漁獲があり、そのほとんどが小定置によるものでした。また、出荷されているもののうち約9割が中チカ(全長12~15センチメートル)でした(図2)。
・平成7年の場合、チカの産卵は4月下旬から5月にかけて行われ(図3)、卵は波打ち際周辺の粒径1~4ミリメートル の極細砂から細礫に多く産み付けられていました。
・漁獲されたチカの大きさを年齢ごとにみると、チカは、4月から6月にかけてはあまり成長がみられず、11月から1月にかけてはほとんど成長がみられませんでした(図4)。また、出荷サイズと年輪の関係をまとめると第1表のようになりました。
 
第1表 チカの出荷サイズと年齢の関係
  春(4~6月) 秋~冬(10~3月)
大チカ 2歳魚が主体であり、全長は18~19センチメートル程度。まれに3歳魚も混入するが、その割合は0~4パーセントであった。 春の「中チカ」が成長したものであり、1歳魚が主体。全長は18センチメートル程度であり、まれに2歳魚も混入するが、その割合は0~4パーセントであった。
中チカ すべて1歳魚であり、全長は13センチメートル程度であった。 10~11月頃は1歳魚が主体であるが、12月以降は成長に伴い、当歳魚が主体となる。
小チカ 漁獲なし 春にふ化した当歳魚であり、10月以降に漁獲される。全長は10センチメートル程度であるが、12月以降、成長に伴い「中チカ」として漁獲される。
    • 図3
    • 図4

4.おわりに

  今回の調査は、単年度のものなので、はっきりこうだとは言い切れませんが、チカ資源を増やして有効に利用するために重要なことは、次の2点になると思います。すなわち、産卵場所となる粗砂や細礫が分布している波打ち際を保護すること。そして、当歳魚が秋には漁獲対象になるので、春の産卵期に禁漁期間を設けるなどして、産卵親魚を保護すること。

  このことは、チカだけでなく、すべての水産資源について当てはまることではないでしょうか。
(釧路東部地区水産技術普及指導所)
(釧路水産試験場主任水産業専門員)