水産研究本部

試験研究は今 No.278「漁業研修生の水産加工研修を終えて」(1996年9月6日)

漁業研修生の水産加工研修を終えて

  釧路水産試験場では、釧路漁業研修所平成8年度青年総合研修の水産加工の講義と実習を担当することになり、5月27日から5月29日の3日間にわたり水産各論の講義と水産加工実習を実施しました。
初日の27日は漁業研修所で行われ、水産試験場の加工部、利用部職員3名が講師として出向き、
  1. 水産加工概論
  2. 海藻類の利用法
  3. 食品の腐敗と保存
の3テーマについて講義しました。今回の研修は、講義の中から簡単なテストが出題されたため、研修生一同、いつもより緊張した面持ちで熱心に聞き入っていました。
第2日目と第3日目は水産加工実技研修のため、場所を釧路水産試験場の加工分庁舎に移して行いました。
加工実技研修として設定されたテーマは、
  1. ホッケー夜子し
  2. スルメイカ塩辛
  3. スルメイカー夜子し
  4. 松前漬げ
  5. もみじこ
  6. ホッケすり身とかまぼこ
の6課題です。これらのテーマは研修生の出身地および所属漁協を考え、共通材料(原料)として入手可能と思われる、ホッケ、スルメイカ、コンブ、スケトウダラを選定しました。
  ちなみに研修生の所属漁協は、渡島支庁管内の落部漁協1名、胆振支庁管内鵡川漁協1名と日高支庁管内の静内漁協1名、様似漁協1名、冬島漁協1名、えりも町漁協3名であり、根室支庁管内からは歯舞漁協1名、野付漁協7名、標津漁協1名、羅臼漁協1名の総勢18名です。実技研修の日程を2日間しかとっていない中で、6品目の研修は困難かと思われましたが、、講師である水産試験場職員の適切な指導と、研修生の研修に対する熱意により、比較的スムーズに進行しました。

  研修生は常日頃、家業の手伝いなどをしているため包丁裁きには自信があるのではと思いましたが、ホッケの開き(頭つき)には馴れていないせいか、額に汗して悪戦苦闘を強いられていました。しかし、もみじこの製造実習では、軟らかいスケトウダラの卵を調味後攪拌する作業の中で時間の経過とともに卵が締まっていくのを手で触れ「あっ硬くなった!」などと初めての体験に驚きの声を上げていました。

  なお、この研修で作られた『作品』はさっそく研修生全員で試食しました。2日間の研修日程では熟成不十分で試食できなかったスルメイカ塩辛も、後日十分熟成したころに研修生の胃袋に納まったと聞いています。

  今回の加工実技研修に対する研修生全員のレポートが、漁業研修所で取りまとめられ、水産試験場に送られてきましたので、研修生の感想を一部ご紹介致しますと、
A君:加工は食べる人の身になってやらないと駄目、だから大変だった。
B君:2日間でいっぱい作りよかった。
C君:意外と水産物を加工することは難しく、手間が掛かるということが分かった。
D君:家でもやったことがあるので、ほとんど分かった。
E君:これからの時代は自分たちで売るための「魚」を取り扱わなければならないので、今回の経験をいかしてもっと自分にあった方向の加工法を勉強して、視野を広げていきたいと思う。
F君:加工は大変な作業だと思った。機械を使うと簡単にできると思った。
以上のような感想でしたが、ほとんどの研修生から、「よい体験をした。」あるいは「楽しかった。」などと言う声が寄せられました。

  青年総合研修は8月2日に、その全日程を終了し、研修生はそれぞれが所属する組合に帰って行きました。短期間の加工実習でしたが、今回の実習の成果を今後、地場産品の付加価値向上に活かして頂きたいと考えています。研修生の皆さんの今後の活躍を期待します。(釧路水産試験場 企画情報主査)