水産研究本部

試験研究は今 No.279「サクラマスフォーラム’96」(1996年9月13日)

9月9日(月曜日)、函館市において「サクラマスフォーラム'96」が開催されました。

  サクラマスは、水産部が「日本海地域漁業振興ビジョン」でプログラムを組み、資源の増大に取り組んでいる重要魚種です。

  このフォーラムは、これまでのサクラマスに関する研究の成果を報告し、また、水産関係者等からのご意見を伺う機会として企画されたものです。講演とパネルディスカッション、展示・試食の3部門で構成され、参加者は、予定の人数を大きく超え、270名を数えました。会場は、一時席が足りなくなるほど盛況で、関係者の関心の大きさを改めて知りました。今後の研究にも、一層はずみがつくというものです。

  今回は、水産関係者ばかりでなく、林業試験場や北海道開発局の方にも講演者、パネリストとして参加いただき、「魚づくり」「森づくり」「川づくり」の3つの側面からの考察を試みたことが、たくさんの方々においでいただけた要因でしょうか。

  また、魚を「つくり・育てる」側だけでなく、魚を「獲る」側の代表にも、もちろん参加していただきました。

  「つくり・育てる」側の代表としては、スモルト放流で効果を上げつつあり、各方面から大きな関心を寄せられている乙部町から吉田氏においでいただき、今後のサクラマス増殖事業に一定の方向性が見え、期待のもてるお話が伺えました。

  実際に漁業にたずさわる方の代表としては、日浦漁協から、青年漁業士の成田氏がパネリストとしてご出席くださり、サクラマス漁の実情の紹介と具体的な提言がありました。

  会場には、渡島・桧山両管内の漁業関係者の皆さんが沢山いらしていて、行政・研究の担当者だけでなく、できるだけ多方面の関係者のナマの声を聞きたいという、主催者の希望がかないました。スポーツフィッシング協会、日本釣振興会の方々もお見えになりました。サクラマスと遊漁の関係は、今後のフォーラムの大きなテーマになりそうです。また、開催場所が函館ということもあって、北海道大学水産学部の先生と学生が参加してくれました。

  講演内容やディスカッションの結果は、いずれ報告書で皆さんのお目に触れるでしょうから、ここでは、さかなのイキがさがらないうちに試食料理のご紹介を致しましょう。
会場である函館ハーバービューホテルの高橋料理長が腕をふるってくれた、和・洋・中それぞれのメニューです。
  1. サクラマスの二一ス風
  2. サクラマスの中華風
  3. サクラマスの岩塩焼き
  4. サクラマスのパイ包み焼き
  5. サクラマスのムニエル木の実添え
  6. サクラマスのブイヤベース“函館”
  一昨年、後志管内岩内町で行われたサクラマスフォーラムのアンケート結果では、刺身、塩焼きなど、どちらかといえば調理法が単純で、馴染みぶかい料理のほうが、評判が良かったため、今回も、塩焼き、ルイベは、欠かせないメニューと事務局では考えていましたが、今年のO-157騒ぎで残念ながらホテルとしては供せないとのことで、上記のようなメニューとなりました。

  高橋料理長は、道産のいろいろな素材を使って、目に新しく、舌に心地良い料理を生み出す亭人ですが、中でもサクラマスは、やさしい味の素材だとおっしゃって、調理も、その持ち味を壊さないように工夫したそうです。
簡単に、料理の内容をご紹介します。
  • 二一ス風:かるく火をとおしたサクラマスにオーロラソース(マヨネーズにトマトソースを加えてピンク色にし、風味を加えたもの)をかけ、千切りの葉野菜の上に盛りつけて、ゆで玉子の裏越しを散らしたもの。軽い前菜に最適です。
  • 中華風:サクラマスに薄い衣をつけて揚げ、ゴマ入りピリカラソースでいただきます。香りつけに白髪ねぎを添えました。
  • 岩塩焼き:用意したサクラマスのなかで、もっとも姿の立派なものを使いました。一尾をまるごと岩塩で覆って焼きます。調理法は単純ながらも、豪快なプレゼンテーションが、パーティー料理として打ってつけです。塩は周りを覆っているだけなので、身に塩味はつかず、その分、ふっくらと仕上がります。チーズ入りのクリームソースをかけていただきます。
  • パイ包み焼き:これも、魚を一本のまま使います。パイ包み、頭、目、ウロコやヒレを摸ってナイフで飾り切り込みを入れ、黄卵を塗って焼きあげます。長円形の皿にのせられた様子は、まるで黄金の大きな魚のよう。軽く仕上げたトマトソースを添えてあります。
  • ムニエル木の実添え:こんがりと揚げたサクラマスにカシューナッツ、ピーナッツ、松の実の3種の木の実をこれも、カリッと揚げて添えました。香ばしさが食欲をそそります。
  • ブイヤベース“函館”:一言でいえば、たいへん繊細。本場のブイヤベースは、いわば、フランスの浜鍋。ダイナミックな料理と聞いています。けれども、材料の魚や野菜を小さく切り、淡い味つけにしたこのスープは、まさに“函館”の名を冠するにふさわしい名品でした。(水産孵化場 企画室)