水産研究本部

試験研究は今 No.461「貯蔵中のナガコンブの色調変化」(2001年11月9日)

貯蔵中のナガコンブの色調変化

  コンブの品質(検査格付け)を判定する基準として、コンブの実入りのほか、色調も重要視されます。一般的に乾燥したナガコンブの色調は、黒色で光沢があり、白粉のないものが良品とされます。しかし、乾燥したコンブを長期間貯蔵すると、貯蔵条件によっては変色し、品質が低下(等級落ち)する場合があるといわれています。ここでは貯蔵中の色調の変化について検討した結果を報告します。

  色調は測色色差計によって測色し、コンブの等級と強い相関があったb*値(:黄色の強さを示す値。大きくなるほど黄色が強くなる。等級の低いコンブは大きい傾向にある。本誌、No.404参照。)およびL*値(:色の明るさを示す値。大きくなるほど明度が高くなる。白粉が生成されると白っぽくなるため、値が大きくなる。)について検討しました。

  貯蔵期間は1999年10月中旬から2000年5月中旬までの7ヶ月間としました。試験区分は、以下の5区分としました。

(1)乾燥剤入りの袋に密封し,暗所で保管・・・・・暗所密封
(2)包装せず露出した状態で,暗所に保管・・・・・暗所露出
(3)乾燥剤入りの袋に密封し,明所で保管・・・・・明所密封
(4)袋を開封したままの状態で,明所に保管・・・・明所開封
(5)包装せず露出した状態で,明所に保管・・・・・明所露出

  貯蔵場所は、実際の現場での保管実態にならって暖房設備のない資材庫を利用しました。試験期間中の資材庫内の温湿度の変化を図1に示しましたが、全期間を通じての最高温度は、16.9度、最低-10度、平均2.1度であり、湿度は最高85パーセント、最低46パーセント、平均65パーセントでした。ここでいう明所とは、資材庫の窓の近くの比較的明るい場所(直射日光は当たらない)であり、暗所とは、資材庫内に設置した光を通さない容器内を指しています。試料には1999年9月3日に浜中町アゼチ岬前浜で採取し、天日乾燥したナガコンブを用い、茎状部に近い部分(元と略す)と葉状部中央(葉と略す)から各4~5センチメートル幅で切り出し、1試験区分につきそれぞれ3枚を測色試料としました。貯蔵中の変化は、3枚の測色値を平均し、貯蔵前の測色値を基準(0)として貯蔵後の値の差(色差ΔL*値,Δb*値)を求めることによってあらわしました。

  図2に貯蔵中の色差ΔL*値およびΔb*値の変化を示しました。ΔL*値は、元、葉ともに明所露出、明所開封、暗所露出の区分が増加し、特に葉で著しい増加が見られ、外観上の白粉の出現の強さとL*値の増加の程度はよく一致しました。一方、密封包装した区分は、白粉は生成せず、ΔL*値の変化も認められません。白粉の生成は周囲の湿度の変動と密接に関係あることが知られているので、白粉の生成を抑制するためには、湿度変化を少なくするため、適正な包装が必要と考えられます。

  Δb*値の変化は、元、葉ともに明所露出がもっとも速く増加し、次に明所開封の値が速く増加しました。一方、暗所に保管したものと明所で密封したものは貯蔵期間中ほとんど変化はありませんでした。
    • 図1
    • 図2
    • 図3
  b*値が低いほど黒色の程度が強いことを以前報告しましたが、b*値の増加は退色が進行している状態であるものと推定されます。コンブの色素は、光に対して不安定であるとされていますが、今回の貯蔵条件(直射日光ではない)では明所においても密封状態で包装した場合、ほとんど退色は進まないことが示され、むしろ白粉の生成と同様に、湿度の変動が退色に影響を与えるものと推定されます。しかし、同じ露出状態で貯蔵した場合、明所の方がb*値の上昇が速いことから、やはり、光の影響は無視できないものと考えます。 以上の結果から、長期間コンブを保管する場合には、包装などにより吸湿を防止し、できるだけ光にさらさないように注意することが重要と考えました。
(釧路水産試験場 加工部 飯田訓之)