水産研究本部

試験研究は今 No.473「サケ鼻軟骨由来コンドロイチン硫酸の精製方法について」(2002年5月10日)

サケ鼻軟骨由来コンドロイチン硫酸の精製方法について

特許取得

  サケの加工処理に伴い排出される頭部、皮、内臓などの有効利用について、様々な研究開発がなされております。その中で、私たちは、頭部の鼻軟骨に含まれるコンドロイチン硫酸という物質を取り出す試験研究を行ってきました。

  コンドロイチン硫酸は、サメ軟骨、牛軟骨、豚軟骨等を原料として製造されており、製品では大きくは、(1)コンドロイチン硫酸ナトリウム、(2)ムコ多糖・タンパク、(3)サメ軟骨の3つに分類されます。

  コンドロイチン硫酸ナトリウムは、腰痛・関節痛を防止する医薬品及びその保湿性を利用した目薬や化粧品、食品添加物として使用され、精製度の高い製品です。ムコ多糖・タンパクは、最近流行の健康食品の素材として、原料由来のタンパク質を含んだコンドロイチン硫酸です。サメ軟骨は、軟骨の乾燥粉砕物で食品として流通しています。

  これらの製品のうち、より付加価値の高いコンドロイチン硫酸ナトリウムの精製方法は、有機溶剤や特殊な薬品を用いることから、施設や経験のない水産加工会社が精製を行うことは困難でした。そこで、調味料やエキス、ジュースなどの製造工程で広く食品工業で用いられている膜分離装置を利用して精製する方法を考えました(写真)。

  鼻軟骨をアルカリ及び酵素処理した溶液中には、主にコンドロイチン硫酸とそれに結合していたタンパク質の分解物がありますが、この溶液を膜処理することにより、タンパク質の分解物が除かれ、必要なコンドロイチン硫酸だけが濃縮されるのです(図)。この操作を繰り返すことにより、医薬品や化粧品レベルに適応した高純度のコンドロイチン硫酸を得ることが可能になりました。

  今年1月には、この膜処理によるサケのコンドロイチン硫酸製造の特許を取得することができました。
(釧路水産試験場 利用部 武田忠明)
    • 写真1
      膜処理装置
    • 図
      膜処理イメージ
    • 写真2
      サケの頭
    • 写真3
      コンドロイチン硫酸