水産研究本部

試験研究は今 No.475「リシリコンブの色調不良を調査する」(2002年6月14日)

リシリコンブの色調不良を調査する

  近年、乾燥した後のコンブに白っぽい斑紋が発生する事例が宗谷管内で見られ、漁業者の間では「まだらコンブ」と呼ばれています。
  まだらコンブは通常のコンブより価格が安くなることから、漁家経営に与える影響も少なくないため、影響を軽減するための対策を講じる必要があります。

  稚内水産試験場では、対策の第1段階としてまだらコンブの発生場所や性状などを詳細に把握する必要があると考え、平成13年度に調査を実施しました。

調査方法

  調査は、潜水による環境調査とコンブのサンプリングで実施しました。これらのデータやサンプルを用いて、生育環境・乾燥方法・乾燥歩留まり・成分・組織などを解析しました。また、成分分析には天然コンブのみではなく、養殖コンブも併せて用いました。

調査実施日及び場所

  • 平成13年7月9日     稚内市富士見
  • 平成13年8月21日   稚内市珊内
   ※養殖コンブサンプル 利尻町新湊

結果

1 環境調査では、採取または生育時のコンブの葉長、葉幅、肥大度、子嚢班からまだらコンブを見分けることは困難でした(表1)。
 
  ただし、まだらコンブが発生した場所は、コンブ現存量(図1)やコンブ着生密度がともに低く、質の高いコンブが期待される漁場で多かったことは、生育段階で何らかの違いが生じていることを示唆していると考えられました。
    • 表1
      表1 採取時点の形態の比較
    • 図1
      図1 コンブ現存量とまだらコンブ出現率
2 成分調査では、CN比(図2)、マンニット、エキス態窒素量(表2)ともにまだら部分(白色部)が高いことが判明したことから、まだら部分には光合成同化産物が他の部分よりも多いと考えられました。
 
  これらの特徴は、質の高いコンブが示す特徴です。
    • 図2
      図2 まだらコンブのCN比
    • 表2
      表2 マンニット・エキス態窒素量の比較
3 性状については、通常部分(黒色部)に比べまだら部分(白色部)は、光を通しにくく(図3、4)、内部まで白い(図5)など、両者に違いが見られました。
 
  これらのことから、まだらによる色の違いは、付着物などによる表面的な違いではなく、内部の状態に違いがあることが明らかになりました。
    • 図3
      図3 まだらコンブ表面
    • 図4
      図4 透過光による観察
    • 図5
      図5 まだらコンブ断面

展望と課題

  最初に述べたとおり、今回の調査は対策に向けた第1歩です。本調査により、まだらコンブの生育条件・成分の知見がある程度は揃いましたが、抜本的な対策を樹立するには至っていません。

  さらに、近年、養殖コンブでもまだらコンブが発生していることから、養殖コンブも含めて引き続きその実態を把握していく必要があります。

  稚内水産試験場では、引き続きこれらの実態把握に務めるほか、平成14年度からは人工的にまだらコンブを再現する試験に取り組み、発生原因の解明を目指します。

  なお、今回の調査でまだらコンブの品質の高さが判明しました。今後、流通関係者などの理解を高めるため、漁業者や漁協自らが普及に取り組むことも必要と思われます。
(稚内水産試験場資源増殖部 瀧谷明朗)