水産研究本部

試験研究は今 No.480「スルメイカ日齢解析の研修」(2002年8月9日)

スルメイカ日齢解析の研修

  水産試験場では、魚の年齢を耳石やウロコにある輪紋を数えることによって、推定しています。スルメイカにも、平衡石というものがあり、この輪紋を数えることで日齢がわかります。平衡石はその名のとおり、平衡感覚を感じる働きをする小さな石で、スルメイカの頭の中にあります。スルメイカは1年しか生きないため、年輪がありません。そこで、平衡石には1日1本輪紋ができるので、その輪紋を数え日齢の推定をします。しかし、日齢が多くなればなるほど、輪紋数が増えるため、推定した日齢に個人差が生まれます。釧路水試でもスルメイカの日齢解析を行うにあたり、中央水試と検証を行いました。その結果、釧路水試が計数した輪紋数は、200日齢を越えると、中央水試よりも少ないことがわかりました。そこで、日齢解析の個人差を減らすため、解析技術の進んでいる中央水試で研修を行いました。今回は、研修内容と現在解析中の結果を簡単に紹介します

解析方法

  中央水試において、平衡石解析システム(表1、図1)を使い、平衡石の輪紋数を数えました(図2)。すでに中央水試で日齢の確定した標本について解析し、中央水試と釧路水試各担当者間の数値がどれだけ違うかについて検討しました。平衡石の輪紋は、3回数え、その平均を確定値としました。読んだ値の誤差が1割を超える検体については、数える回数を増やし、中間の値3回分を平均しました。

表1 平衡石解析システム
顕微鏡 Carl Zeiss Axiophot
CCD有効画素数 768×494
解析ソフト OLYMPUS FLOVEL VIDEO& MICRO METER VM-30
対物レンズ ×100
14インチモニター
    • 図1 平衡石解析システム
    • 図2 平衡石の輪紋

比較結果

  中央水試と釧路水試担当者による日齢解析結果から、200日齢を越える標本に差がみられました。日齢の差は、一番大きな値で44日齢違いました。釧路水試の方が中央水試よりも少なく推定していました。これは、釧路水試担当者が、まだ解析数が少ないため、数えた輪紋数にばらつきが多くなり、中央水試担当者との差が大きくなったと考えられます。また、スルメイカの成長期と停滞期では輪紋間隔が違い、どこから変わるのか判断を間違うと日齢の推定に大きく影響することが、中央水試担当者から指摘されました。また海域によって成長に差が生じるため、日齢の推定にも影響を与えます。指摘に沿って解析し直した個体は、その差が小さくなりました。

  一方輪紋数200以下の標本では、その差は少なくなります。これは、200日齢くらいまでは成長期にあるため、輪紋がはっきりしているので輪紋を数えやすいためと考えられます。今回の研修で、200日齢以下のスルメイカについては、解析結果に問題ないことが確認されました。

道東沖合のスルメイカのふ化時期について

  現在釧路水試では、道東沖合へ6月に来遊するスルメイカのふ化時期について解析を行っています。図3に示したのは、1999年6月に調査船北辰丸で漁獲したスルメイカのふ化時期です。ほとんどが、150~200日齢の範囲にあり、今回の研修から解析値に問題ないと考えられます。12月中旬をピークに、11月下旬から1月にかけてふ化したスルメイカがほとんどでした。

    • 図3 1996年6月北辰丸漁獲サンプルのふ化時期

さいごに

  現在中央水試では、スルメイカ日齢解析マニュアルを作成中です。また、日齢解析のモニタリングも行われることになっています。釧路水試もモニタリング化に向け、技能向上に努めたいと思います。

(釧路水試資源管理部 佐藤 充)